WSJによれば、米商務省は新規制を制定する前に、しばしば企業にこのような書簡を送る。だが、これらの制限は変更される可能性や、全く実施されない可能性もある。
TSMCは具体的な内容についてコメントを控え、「当社は規則や規制を順守している」と述べた。エヌビディアは、「未発表の規則についてはコメントできないが、政府が必要とする情報はいつでも提供する準備ができている」とコメントした。同社は、「高度なコンピューティングはイノベーションを推進し、世界経済を強化する」とも述べた。
年々強化される対中規制、中国は報復措置
米商務省は2024年12月2日、先端半導体に関する中国への輸出を制限する新たな対中規制を発表した。
AI(人工知能)向けのHBM(広帯域メモリー)の中国への販売を制限し、中国が利用できる半導体製造装置の範囲を狭めた。加えて、既に中国・華為技術(ファーウェイ)などを対象としている、取引制限リスト(エンティティーリスト、EL)に中国140社を追加した。
米商務省は2022年10月、エヌビディアのGPUなど、AI向け先端半導体を中国などに輸出することを原則禁じた。翌年の2023年10月にはこの規制の強化を発表。中国などに対する米国製先端半導体・製造装置の禁輸対象を広げた。2024年は生成AIに使われる高度なプロセッサーに不可欠なHBMの輸出を事実上禁じた。
この規制強化を受け、中国は先ごろ、先端半導体の製造に使われる鉱物の輸出規制を強化すると発表した。加えて、エヌビディアに対する独占禁止法調査を開始すると明らかにした。これらは報復とみられる。
一方、米政府の輸出制限があるにもかかわらず、中国は高度な半導体技術で進歩を遂げ、米議会をいら立たせているとWSJは報じている。
最近は、TSMCが製造したコア回路がファーウェイのAI用半導体に組み込まれていたことが分かり、米政府や業界に大きな驚きをもたらした。中国への技術移転を阻止しようとする試みの難しさが改めて浮き彫りになったと指摘されている。