悪いのはルール、選手個人は悪くない
報道によれば、米大リーグ・パドレスのダルビッシュ有投手がSNSのライブ配信を通じ、ポスティングシステムについて「問題があると思う」と語ったという。元メジャーの上原浩治氏は12月18日付の自身のヤフーサイト内のコラム「野球に正解はない!」で、「ポスティングシステムのルールに問題があると思っている」と指摘した。
上原氏は「少なくとも日本球界で移籍が可能となる国内FA権の取得条件を満たすことなく、メジャーへ挑戦した選手の日本国内における保有権は、あくまで元の球団に帰属するというルールを整備するだけで解決するのではないだろうか」と提案。「ポスティングで送り出した球団が、補強や若手の台頭などで戦力が充実している場合には、その時点で保有権を放棄して自由契約にすれば、選手はFAになってどの球団とも交渉できる。このほうがフェアだと思う」とも指摘した。
その上で、ダルビッシュ投手、上原氏はともに、上沢投手個人への批判が広がっていることについて懸念も示す。ダルビッシュ投手は「契約ごと、お金は個人の問題で家族の問題でもある。他人に男気を求めるのはちょっと違うなと僕は思う」と、上沢投手に向けられる批判の声を牽制。上原氏も「ネット上では、ソフトバンクや上沢投手を批判する声があるが、おかしいと目を向けるべきは、ルールであり、そこに目をつぶっている日本球界だと思う」と釘を刺す。
上原氏が指摘するように、ポスティングシステムでの移籍が国内FA権の取得前であれば、日本国内における保有権だけをメジャー移籍と同時に失わないという条文を付けることは妙案だろう。日本に復帰した後、国内FA権を取得するまでプレーした後は、FAになればいい。
ポスティングシステムに限らず、制度運用の中で抜け穴のような欠点が明るみに出ることは避けられないこともある。今回のように極端な事例が出たときこそ、ルール改定に動くタイミングともいえ、日本球界の対応が急がれる。
田中 充(たなか・みつる) 尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授
1978年京都府生まれ。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士課程を修了。産経新聞社を経て現職。専門はスポーツメディア論。プロ野球や米大リーグ、フィギュアスケートなどを取材し、子どもたちのスポーツ環境に関する報道もライフワーク。著書に「羽生結弦の肖像」(山と渓谷社)、共著に「スポーツをしない子どもたち」(扶桑社新書)など。