だが、EVの購入補助金は本当に政策の優先事項なのか?
EVはグローバルで普及が停滞しているが、その大きな理由の一つに、価格の高さがある。英国やEUは購入補助金を支給することで政策的に価格を引き下げてきたが、それが息切れした。英国の場合、目標を実現しないと自動車メーカーが罰金を払わなければならないため、業界を上げて値引きをして需要の喚起に努めたが、それも限界に達している。
現実的な目標に修正しないのなら、政府が補助金を出すべきだというSMMTの主張は至極もっともだ。労働党政権は歳出を増やす一方、財政再建のために増税に着手すると宣言している。歳出も増やすなら、それ以上に歳入を増やさなければ、財政再建は進まない。こうした状況下でEVに購入補助金を出すことは、本当に優先事項なのだろうか。
7月の総選挙で歴史的な勝利を収めた労働党だが、労働党に投票した有権者のうち、特に無党派層の多くが労働党の公約に賛同しているわけではない点は重要である。彼らの多くは、14年続いた保守党による政治に不満を抱いていたに過ぎない。そうした無党派層の有権者に対して気候変動対策の重要性を説いても、大きくは響かない。
確かに、労働党政権としては自らの支持母体である労働者団体や環境団体が満足する政策を揃えなければならない。だが、そうした支持母体へ配慮した政策に傾斜すれば、無党派層の支持を失うことになりかねない。増税を強いられる中で、気候変動対策の名の下にEV購入だけに手厚い補助金が給付されることに納得する人はどれだけいるだろうか。