3.通航したことがない海峡情報を収集

 中国海軍測量艦の調査は、東シナ海の中間線から中国の沿岸まで、およびこれまで中国海軍艦艇が頻繁に通過している宮古海峡、大隅海峡については終了している。

 これからは、中間線から日本の南西諸島周辺、そして太平洋に出るためのすべての海峡の海底を丹念に調査すると考えられる。

 その主な理由は、日本の南西諸島の各島間の海峡が、中国潜水艦にとって必ず通過する必要がある最大の難所だからである。

 中国海軍艦艇は、西太平洋に進出する場合、日本の南西諸島によって、地形的に閉じ込められている。

 西太平洋に進出できないと、台湾の防衛の背後(東側)から攻撃することはできない。

 通峡時、その出口で日本から攻撃されれば、その海峡で撃沈される可能性がある。

 また、中国海軍が台湾を海上封鎖する場合、潜水艦は南西諸島の各島の間で通過できるすべての海峡の海底地形を調べておく必要がある。

 すべての海峡を使えるようにしておきたいのである。

 そうでなければ、潜水艦はそれらの海峡を安全に静粛に通過することはできない(潜航中にアクティブソナーを使って地形を確認する方法があるが、これを使うと、大きな音を発してしまうために、敵に発見されやすくなる)。

 通過できなければ、中国海軍は南西諸島に封じ込まれ、西太平洋で米軍との戦闘ができなくなる。

 中国は、南西諸島付近(概ね第1列島線)での接近阻止(A2)、南西諸島以東から第2列島線までで、来援する米軍を自由に行動させない領域拒否(AD)戦略があると言われている。

 しかし、潜水艦が南西諸島の間の海峡通過を秘匿できないか、あるいは強硬突破できなければ、この戦略は達成されないのである。

図4 南西諸島における第1列島線内の海洋を通過するイメージ