変化し続ける睡蓮の描き方

クロード・モネ《睡蓮、夕暮れの効果》1897年 油彩/カンヴァス マルモッタン・モネ美術館、パリ © musée Marmottan Monet / Studio Christian Baraja SLB

《睡蓮、夕暮れの効果》(1897年)は、モネが初めて描いた「睡蓮」作品のひとつと考えられている。後年に制作した、陽光を受けてさまざまな表情を見せる水面の幻想的な表現とは異なり、ここでは睡蓮の白い花そのものをフォーカスしている印象。本展ではこの作品を基準作にするといい。モネの睡蓮がここからどう変化していくかが見どころだ。

クロード・モネ《睡蓮》1907年 油彩/カンヴァス マルモッタン・モネ美術館、パリ © musée Marmottan Monet

 1900年代になると、モネの睡蓮作品は「水」が主役になっていく。睡蓮の花よりも、水面の表情がメイン。時間帯や天候によって変化する水面の色合い、周囲の木々や雲をぼんやりと写し込んだ反映の風景。赤、ピンク、オレンジ、青、紫、緑。様々な絵具を用いて、モネは刻々と変わりゆく水面を生命力豊かに描き上げようと努めた。モネは旧知の批評家ギュスターヴ・ジェフロワに宛てた1908年8月11日付の手紙にこう記している。「水と反映の風景に取りつかれてしまいました。老いた身には荷が重すぎますが、どうにか感じたままを描きたいと願っています」。