選挙で勝っても負けても混乱必至

 では、再選されたらどうなるのか。

 トランプはすでに、大統領は法を超越すると明言している。連邦最高裁判所判事のなかにも、その見解に説得力があると考えている向きがいる模様だ。

 共和党の幹部にも、トランプは法に従わなくてもよいと考える人がいる。そしてトランプは、復讐という目標も掲げている。

 法を超越する行政官は「どんなことでもできる」。

 自分に忠実な手下に軍隊や連邦捜査局(FBI)、諜報機関、課税当局、司法省を支配させれば、誰に対しても好きなことができるようになる。

 自分の敵に嫌がらせしたり恥をかかせたり、破産させたり投獄したり、思いのままにできるのだ。

 それを止める人はいるのだろうか。恐らく、止めようと試みるだけでも勇気が要る。

 トランプが今度の大統領選挙で敗れれば、自分は負けていない、本当は勝ったんだと、共和党の支援を受けながら主張することは確実だ。

 そんなことになれば大混乱が生じる。

 逆にトランプが勝ったら、支持者たちは「ディープ・ステート(闇の国家)」の粛清を始めるだろう。米国に対して忠実で、トランプ個人に忠実でない人物を排除していくということだ。

 すると、ほかにも様々なことが生じる可能性が出てくる。

 1100万人に上るかもしれない不法移民を一斉検挙して国外追放するといったことも起こり得るだろう。そんなことになれば、この国は暴力的に、かつ危険なほど分断されかねない。