5月29日、選挙イベントに参加したスナク首相(写真:ゲッティ=共同)

(舛添 要一:国際政治学者)

 イギリスのスナク首相は、5月22日、7月4日に総選挙を行うと発表した。定数650、任期5年の下院は、5月30日に解散した。来年1月末までには解散する必要があったが、大方の予想に反して早期解散となった。

支持率低迷の中での賭け

 最近は、与党・保守党の不人気が際立っている。5月29日に、世論調査会社YouGovが発表した世論調査結果によると、労働党支持率は47%、保守党支持率は20%であった。5月2日公表の同社調査では労働党支持は44%で、保守党支持は18%であった。4月の同社の調査では、労働党が44%、保守党が21%だったので、保守党にとって状況は悪化している。

 同じ5月2日に行われた地方選挙では、保守党の議席は激減し、トップは労働党、2位は自由民主党となり、保守党は第3位という屈辱的な地位に転落した。市長選でも、11市のうち10市は労働党が勝ち、保守党が勝利したのは1市のみであった。

 このような状況でスナク首相が解散総選挙を決めたのは、これ以上待つとさらに支持率が下がってしまうとの危機感を持ったからである。勝てないことはほぼ確実であっても、少しでも負けを少なくしようという戦略である。

 岸田首相も解散の時期を探っているが、今は政権の不人気ぶりが酷く、とても解散などできないという判断である。ひたすら事態が好転するのを待つという態度である。ただ、イギリスと違って野党が小党分裂している。その意味では、スナク首相のほうが岸田首相よりも遙かに厳しい状況にある。

 5月22日には、イギリス統計局が4月の経済指標を発表したが、消費者物価指数は前年同月比で2.3%であった。2022年10月のスナク政権発足時には10%を超えていたので、インフレ退治には成功したと言える。この自慢できる数字が公表された直後に、スナク首相は解散総選挙を決めたのである。

 また、不法移民に対する国民の不満が高まっていることを背景に、スナク首相は、4月22日、不法移民をルワンダに移送する法案を可決させた。7月には移送を開始する予定である。

 このように、政権にとって好材料が揃ったタイミングを見逃さなかったということでもある。