プラットフォーマーを恐れずオープンに議論できる日は来るか?

岸原:日本では、2009年のモバイルプラットフォーム協議会において、行政、プラットフォーム事業者(通信事業者)とコンテンツ事業者の協議によって、標準ガイドラインを取りまとめて、安心安全なオープン化を実現しました。その後、プライバシーやセキュリティに関わる問題は発生していません。

 これは、当時のプラットフォーム事業者であるキャリアが、社会の一員として、新たな社会ルールづくりに尽力したからです。今回の新法でも指定事業者となるプラットフォーム事業者には積極的な協力を期待したいと思います。

 将来は、日本の基幹産業における自動車も、EV化によってエンタメ等のサービスがビジネスモデルの肝になります。その時にアプリ市場がオープン化されていなければ、自動車の収益もOS・アプリストア事業者に吸い上げられることになるかもしれません。

「日本の法規制は欧米の状況を見てからでも遅くない」という意見もあるようですが、様々な技術分野でEUを中心に、多様なプライヤーが参入する新たな社会のルールメイキングが進んでいます。早急にルールメイキングに参加しなければ、独自文化をもつ日本の消費者や子どもを守ることはできなくなると思います。

 極めて異例ですが、スマートフォンのコンテンツ等に関係するゲーム、ITサービス、スタートアップの業界7団体共同で、共同声明文をまとめ、一般に公開しました(元資料)。独占的なプラットフォーム事業者による成長モデルから、より公平で多様なプレイヤーが関与する成長モデルへの転換について説明しています。

 本来であれば、海外のように、アプリ事業者等が意見を表明すべきですが、プラットフォーム事業者からの不利益な取り扱いを危惧して、なかなか表に出てこられない状況です。このような状況も早く改善されて、社会全体でオープンに議論できることを望んでいます。

「変えられるものを変える勇気を、変えられないものを受け入れる冷静さを、そして両者を識別する知恵を与えたまえ」という米国の神学者、ラインホールド・ニーバーの言葉を引用したいと思います。

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長野光(ながの・ひかる)
ビデオジャーナリスト
高校卒業後に渡米、米ラトガーズ大学卒業(専攻は美術)。芸術家のアシスタント、テレビ番組制作会社、日経BPニューヨーク支局記者、市場調査会社などを経て独立。JBpressの動画シリーズ「Straight Talk」リポーター。YouTubeチャンネル「著者が語る」を運営し、本の著者にインタビューしている。