西側への敵意と計算された対応のバランス
外交政策についても似たような物語になる公算が大きい。
ハメネイ師は紛争をイラン沿岸から遠ざけておくことを狙い、西側とイスラエルに対する好戦的な態度を貫きつつ、イスラエル・ハマス戦争によって引き起こされた地域紛争には(リスクがあるとしても)計算された対応を講じることでバランスを取ってきた。
イランはいわゆる「抵抗の枢軸」で後ろ盾になってきた武装勢力(レバノンのヒズボラやイラクとシリアの武装勢力、イエメンのフーシ、ハマスなど)を公然と支援し、これらの組織は中東各地にあるイスラエル、米軍の施設に対して攻撃を仕掛けてきた。
だが、イランは繰り返し、これらの組織はそれぞれ独立して活動しており、イランとしては全面的な地域戦争や米国との直接衝突を望んでいないと主張してきた。
今年4月、ハメネイ師はイラン革命防衛隊の幹部数人が死亡したシリア・ダマスカスのイラン領事館に対するイスラエルの攻撃への報復として、イラン国内からミサイルとドローンをイスラエルへ発射する初の直接攻撃を承認することで賭けに出た。
イスラエルはこれに対し、イラン中部の街イスファハンの近くの空軍基地をミサイルとドローンで攻撃した。
だが、抑制の効いた応酬の被害は限定的で、両国ともエスカレートを望まない考えを表明した。
最高指導者はレガシーを守る決意
究極的には、ハメネイ師の最大の目的は、国内政策や外交政策を通して共和国の存続を確実にすることだ。
ハメネイ師はライシ師という信頼できる参謀を失ったものの、自身自身のレガシーと忠実な強硬派の権力を守ることを断固決意しており、大統領の死によってハメネイ師や政権が現在の軌道から外れることはないだろう。