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 心から成長を願う人がいる。周りの私たちはどう支援してあげればいいのだろうか。

 米国の組織行動学の研究者たちが著した書籍『成長を支援するということ──深いつながりを築き、「ありたい姿」から変化を生むコーチングの原則』(リチャード・ボヤツィス、メルヴィン・L・スミス、エレン・ヴァン・オーステン共著、英治出版)では、成長を支援する人(コーチ)と対象者との関わり方を「誘導型のコーチング」と「思いやりのコーチング」に区別し、「思いやりのコーチング」が人の持続的な成長に寄与することを、脳科学の実験結果から明らかにしている。

「誘導型のコーチング」とは、昇進や年度目標の達成といった、外部から定められたものに向けて相手の行動変容を促すアプローチ。一方の「思いやりのコーチング」とは、相手を心から気遣って関心をもって接し、サポートや励ましを差し出し、相手が自分のビジョンや情熱の対象を自覚、追求できるようにするコーチングだ。

 どうすればコーチは「誘導型のコーチング」に陥らず、「思いやりのコーチング」を実践することができるのか。「思いやりのコーチング」はどう機能するのか。そのポイントを、『成長を支援するということ』の一部を抜粋・再編集して紹介する。後編では、コーチングのマインドセットの重要性について見ていく。(JBpress、後編/全2回)

マインドセットや感情の状態が会話の展開を左右する

 コーチとして、対話に使うスキルと同じくらい重要なのがマインドセットだ。自分の内面のバランスが崩れた状態では、コーチングをうまく進めることはできない。準備とマインドセットがすべてである。

 本書『成長を支援するということ』ではさまざまな形の「思いやりのコーチング」について論じているが、共著者である私たちの多くが「親」としてコーチをしてきた経験があるというのも重要だ──とりわけ子どもが何かの節目を迎えているときには。本書の著者の1人、エレン・ヴァン・オーステン(米国ケース・ウェスタン・リザーブ大学ウェザーヘッド経営大学院組織行動学の准教授)の例を以下に挙げる。