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50年以上にわたってAIの研究とビジネス利用を進めてきた東芝。その技術研究部門で機械学習、画像処理技術を研究し、AIビジネスを指揮してきた同社執行役員、研究開発センター首席技監の堀修氏が、企業のDXとAIの関係、正しいAIの導入方法、そしてAIガバナンスの在り方について語った。
どんなデータを収集するか?カギとなる「ドメイン知識」
――東芝では長年にわたってAIの研究を続けてきました。生成AIの登場で注目度が高まっている今日において、東芝のAI技術の強みとは何でしょうか。
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1986年東芝入社。総合研究所(現・研究開発センター)で機械学習、画像処理技術の研究開発に従事。2015年研究開発センター所長。2020年首席技監。2022年AI-CoEプロジェクトチーム リーダーを兼務、現在に至る。AIに関する東芝グループ横断の活動を主導している。
堀修氏(以下・敬称略) 確かに、昨今のAIのアルゴリズムの進化には目を見張るものがあります。今後重要な課題となるのは、それを適用するビジネス領域の知識です。私たちはそれを「ドメイン知識」と呼んでいます。
当社の事業である、例えば火力発電プラント、水道事業、鉄道事業など、それぞれのお客様の困りごと、運用の課題を知っていることが、AIの最適な活用に直結します。
――なぜAIの活用においてドメイン知識が重要なのでしょうか。
堀 グローバルなテック企業は、汎用性の高いスタンダードなAIを目指して開発をしています。ビジネスにおいてそれをうまく活用するには、個々の企業の事業から得られるデータをいかにAIに学習させるかが重要です。つまり、どういうデータを学習させ、出てきたデータをどう解釈するかの知識が必要ということです。
例えば、水道管の水漏れを検知するためにどんなデータをセンサーで取得すればいいかは、ドメイン知識がなければ導き出すことができません。水道の専門家は、水道管を流れる水の音を聞き分けて水漏れを検知しますが、こうした技術や知識をAIにどうやって学習させるかが、AIの精度を決めるのです。