NHKの朝ドラこと連続テレビ小説『虎に翼』が人気だ。向田邦子賞を2年前に最年少で獲得した吉田恵里香氏(36)による脚本が出色であり、ヒロイン・猪爪寅子(いのつめ・ともこ)役の伊藤沙莉(29)ら登場人物の演技も申し分なく、演出も凝っているから、ごく自然なことだ。
抜きんでた脚本の力
まず脚本の大テーマがいい。憲法第14条「法の下の平等」を下地とし、全ての不平等への反意と多様性の尊重を言外に訴えている。
この条文が嫌いな人はほとんどいないのではないか。女性の弁護士、裁判所長の第1号となる寅子にとって格好の題材である。
その一方でこの条文は今も実現しているとは到底思えないから、古い話なのに現代まで地続きの物語になっている。私たちを取り巻く「法律」の本質に触れるという側面もあり、骨太な印象も与えている。
しかも物語のテンポが速く、エピソードもふんだんに収められているから、観る側を片時も退屈させない。それでいて説明不足になっていない。ちなみに吉田氏はここ10年の朝ドラ執筆者の中で最も若い。凄まじいまでの才能の持ち主である。