若年層の個人視聴率が伸びている

 物語の人気は右肩上がりを続けている。『あまちゃん』(2013年度上期)以来の国民的ヒット作になることも予感させる。それを裏付けるエビデンスもある。

 前作『ブギウギ』の第15回(昨年10月20日)の視聴率は個人全体が8.5%で、もうテレビ界は使っていない世帯視聴率は15.4%。最近の朝ドラとしては平均的だった。

 一方、『虎に翼』の同じ第15回(4月19日)は個人が9.4%で世帯が16.6%。目を見張るほどの差はないものの、注目すべきは若い世代の個人視聴率である。

『ブギウギ』の第15回は10歳から19歳までのT層が0.3%。20歳から34歳のF1層が0.9%だった。これも平均的である。その一方、同じ第15回の『虎に翼』はT層が1.6%でF1層も1.6%。ほかの日も若い世代の個人視聴率が高い。

 放送時間帯もあり、朝ドラの岩盤支持層は50代以上。その平均的な個人視聴率は女性が22%前後で、男性は13%前後。ともに高い数字であるものの、40代以下も観なければ話題沸騰には至らず、国民的ヒット作にもなり得ないのである。

 若い世代も朝ドラが観やすいゴールデンウィークや夏休みにどれだけ視聴率か伸びるかが注目される。

【高堀冬彦】
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

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