ストレッチは本当にケガの予防になるのかと疑問に思っていた。
一時期、足のふくらはぎがよく痙攣(けいれん)することがあった(経験したことがある人は分かると思うが、激痛である)。痙攣するのはたいてい一日中歩きまわって疲れている時や、スポーツをしている最中だ。
スポーツをしている時に痙攣が起きるのは準備運動が足りないせいだと思い、入念に足のストレッチを行い、ふくらはぎを伸ばすようにした。だが不思議なことに、そうするとますます痙攣が増えるのだ。
痛い思いを何度か繰り返して、ある時、本当にストレッチは効果があるのかと疑うようになった。運動前にストレッチをすればするほど、ふくらはぎの筋肉がコチコチに固くなっている気がする。もしかしたら、ストレッチは筋肉を緊張させているだけではないのか。その緊張が痙攣を誘発しているのではないか──。
もう1つ、スポーツをしていて疑問に思っていたことがある。プレッシャーがかかると、なぜ身体が動かなくなるのか、ということだ。
例えばゴルフでもテニスでも、練習では楽々とできていることが、本番になるとできなくなる。特にプレッシャーのかかる大事な場面になると、体の各パーツの可動域が狭くなって、思うように動けなくなるのだ。自分の体に一体何が起きているのか。
身体の「恒常性」を一定に保つのが自律神経の大きな役割
そうした疑問に対して、順天堂大学医学部教授の小林弘幸氏が著した『なぜ、「これ」は健康にいいのか?』は、明快で納得のいく解答を示してくれた。
一言で言うと、痙攣が起きるのも身体が動かなくなるのも、自律神経のバランスが崩れている状態だったのだ。
「自律神経」とは何か。改めて説明すると、自律神経は内臓や血管の機能をコントロールする神経である。
体の「恒常性」を一定に保つのが、自律神経の大きな役割だ。つまり、外部環境の変化に左右されずに、体の内部環境を一定に保つ役割を担う。人間の意識とは無関係に心臓が脈打ったり、眠っている間も呼吸が続いたりするのは自律神経のおかげである。