先日、韓国で開かれた学会に呼ばれて講演をした。僕の講演のタイトルは「End of “Made in Japan?”」。昨年夏に出版した本『メイド・イン・ジャパンは終わるのか』の内容を要約したものだ。

 エレクトロニクス産業を中心とした日本の製造業の低迷は、「製品プル型」から「デバイス(機能)プッシュ型」へと移行する、産業構造の大きな転換に対する遅れに原因がある。

 安定した製品コンセプトと安定した顧客ニーズを前提として、素材から最終組み立てに至る、価値連鎖全体の活動を、徹底的に同期化させる。これが日本の製造業の強みであった。だが、その強みが、半導体技術とデジタル技術の発展を受け、製品の境界が次々と再定義されるようになる中では、生かされにくくなった。

 これが本の大枠の主張であり、韓国の講演でも同様の話をした(詳細は本を読んでください)。日本企業にとって、あまり明るい話ではないことは確かだ。

 一方、僕の前に講演したのは、中国の南京大学の先生。中国企業改革の歴史を整理して、いかに中国が急速な成長を遂げたのか、そして今後の成長がいかに約束されているかを、流暢な英語で話していた。聴衆はみんな納得して聞いていたようだ。

 僕の次に講演したのは、ソウル大学の先生。サムスン電子がいかに優れているのかを、経営組織を中心に明らかにした研究内容の報告だった。

 いずれも元気のよい明るい話であり、僕の講演とは対照的だった。3つの講演後に設けられたディスカッションの時間も、「日本はなぜダメなのか」「サムスンと日本企業はどこが違うのか」「中国と韓国から日本は何を学ぶべきか」といった話題に費やされた。

 日本人としては、少々寂しい気持ちになった。バブルがはじける直前の1990年代前半、僕が米国に留学した時には、英語のできない僕の発言に、日本人だというだけで耳を傾けてくれたものだった(卒業する頃にはもう誰も話を聞いてくれなくなったが・・・)。

サムスンの成長を支えたマクロ的要因

 果たして日本の製造業はそれほどダメになってしまったのだろうか。

 エレクトロニクス産業を中心に日本の製造企業が、産業の大きな転換に追従できなかった点は、確かに問題であったと思う。