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(篠原 信:農業研究者)

 突然ですが、ドリンクや製菓材料として使われるココアパウダーの輸出額世界一の国はどこでしょうか。

「ガーナチョコレート」というくらいだから、アフリカのどこかかな。インドネシアもかなりカカオ豆を生産していると聞いたことがあるぞ、と考える方もいらっしゃるかもしれません。

 答えは、オランダ。意外に思われる方も多いでしょう。なにせ、オランダは寒すぎてカカオの木が育たないのですから。興味深いことに、オランダは世界最大のカカオ豆の輸入国でもあります。

 チョコレートで有名なベルギーのメーカーも、アフリカの生産者と直接取引するのではなく、オランダで原材料を買い求めます。アフリカの生産者も、ヨーロッパに営業に行って顧客を探せば中間マージンを取られずに済みそうなのに、そうはしません。

貿易国オランダが得意な「御用聞きビジネス」

 オランダは、世界一の花の輸出国として有名です。これはなんとなく分かる気がします。オランダといえばチューリップのイメージがありますから。しかし狭いオランダ国内で生産する花だけでは、とても世界一の輸出国になれません。実はオランダは、世界で一、二を争う花の輸入国でもあります。例えば、アフリカのケニアで生産されるバラの51.9%がオランダ向けです(2017年、金額ベース)。

 なぜケニアの花卉生産者は、パリやローマなどに営業に行き、直接売り込まないのでしょう?

 これは、オランダ企業が「御用聞き」に徹しているからだと思われます。「簡単に溶けないハードなチョコレートを作りたい」という顧客の要望を聞いたら、それに適した品質のカカオを世界の産地から調達する。逆に口どけのよいチョコレートが欲しいメーカーには、口どけのよいカカオを。豪華な花がほしいという顧客にはそれを、可憐な花を求めている顧客にはその花を。