銀行員、経営コンサルティング会社社長などのキャリアを経て、西本願寺の事務方トップに転じた異色の経歴を持つ安永雄彦(法名・釋雄玄)氏銀行員、経営コンサルティング会社社長などのキャリアを経て、西本願寺の事務方トップに転じた異色の経歴を持つ安永雄彦(法名・釋雄玄)氏

浄土真宗本願寺派の本山、西本願寺の執行長(しゅぎょうちょう)を務める安永雄彦氏が、「会社と自分」をテーマに『何度でもリセット〜元コンサル僧侶が教える「会社軸」から「自分軸」へ転換するマインドセット〜』を出版した。銀行員として21年、経営コンサルティング会社社長として15年のキャリアを経て、西本願寺の事務方トップに転じた異色の経歴を持つ安永氏が、このほど築地本願寺でビジネスパーソン向けに講演会を開いた。ゲストとして参加した作家・ジャーナリストの鵜飼秀徳(浄土宗正覚寺住職)を相手に安永氏が語ったこととは…(全2回の2回目、文中敬称略)

司会:中山景=KOK(コウケイ)株式会社 代表取締役
構成:宮本恵理子=フリーランスエディター・ライター

【前編から読む(リンクはこちら)】
《日経平均が最高値圏のいま考える》下り坂の時代、ビジネスパーソンは「自分の軸」をどう磨いていけばいいのか

すべての物事には原因があり、その関連によって結果が生まれる

――不確実性が高く、「会社もいつまで存続するか分からない」という不安を内在する現代社会を生きるビジネスパーソンにとって、仏教がもたらす価値とは。あらためてお聞かせください。

鵜飼秀徳(作家・ジャーナリスト、浄土宗正覚寺住職、以下は鵜飼):仏教に対する関心の高まりは日々感じていますね。私自身、大手印刷会社の顧問として会議に参加しているのですが、オファーをいただいた際のご期待は「仏教の叡智を社員教育に活かしたい」というものでした。

 その背景を紐解くと、ここ最近の報道でも世間を揺るがす不祥事の問題が大きいと思います。不正を隠蔽することで問題が肥大する不祥事による負の影響は、大きな組織ほど深刻となります。組織で働く一人ひとりが倫理観をもって、「自分が正しいと信じられる行動に、真面目に取り組む」という姿勢が一層問われる時代だと言えるでしょう。

 忖度で動くのではなく、自分を律して信念ある行動ができる人間の集合体が、営利活動を基盤とする企業にも求められている。仏教の普遍的な価値が、今、見直されていると思います。

安永雄彦(西本願寺執行長、グロービス経営大学院教授、以下は安永):西洋的な合理主義は、「1+1=2」の積み重ねで世界の全てが解明できるという論理が前提となっています。一方で、東洋的思想に成り立つ仏教の根本原理にあるのは「縁起」。すなわち、すべての物事には原因があり、その関連によって結果が生まれる。これが、お釈迦様が説いたと伝わる「縁起論」です。

 そこには前世の因縁や占い的な余地は一切なく、ただ何らかの行動に紐づく結果が存在するという究極の合理的思想を前提とするものなんですね。西洋的合理主義とは全く異なる仏教的な合理性が見直されることは、複雑化する現代社会を照らす新たな光となっているのではないかと私は思います。

安永雄彦氏 浄土真宗本願寺派 本願寺(西本願寺) 代表役員執行長
1954年東京生まれ、開成高校、慶応義塾大学経済学部卒業、ケンブリッジ大学大学院博士研究課程修了(経営学専攻)、三和銀行(現三菱UFJ銀行)、米系大手人材コンサルティング会社ラッセル・レイノルズ社を経て、経営幹部人材の人材サーチコンサルティング会社島本パートナーズ社長(現会長)。2005年に得度し浄土真宗本願寺派僧侶となる。2015年7月より築地本願寺代表役員宗務長として僧侶組織のトップとして法務に従事するとともに、寺院の運営管理や首都圏での個人を対象にした新しいかたちの伝道活動に従事し伝統寺院の改革を主導。2022年8月より京都の浄土真宗本願寺派本山である西本願寺の代表役員執行長(しゅぎょうちょう)として本山の改革に従事中。グロービス経営大学院大学専任教授。経済同友会会員。元武蔵野大学学外理事(現顧問)。龍谷大学理事