グループ会社を含めて30年以上勤務した電通で利益率を向上させつつ、残業時間を大幅に短縮するという経験を著した『鬼時短』(東洋経済新報社)が話題になっている。
現在はコンサルタントとして企業に「時短から始める企業改革」のアドバイスをしている著者の小柳はじめさんは、以下の「3つの原則」を貫けば、劇的な「時短」の達成とともに、会社が驚くほど変わり始めると明かしている。
①時短は「社員のムダな動きをやめさせる」ことではない
②時短は「会社が社員に強いているムダをなくす」ことである
③時短は「会社から社員への最高のもてなし(リスペクト)」である
そのエッセンスをお伝えしよう。
※この記事は、『鬼時短』(東洋経済新報社)から一部抜粋・編集したものです。
(小柳 はじめ:Augmentation Bridge代表)
電通では、会社が、不退転の覚悟で全社員6000人以上の調査を断行しました。上記のような不満や疑問が各部門からあがりましたし、事務局に対してもかなり剣呑な意見が寄せ続けられました。
1カ月後、どうにかこうにかほとんどすべての社員の工程の棚卸しが終わりました。その結果を見て、社内の空気があきらかに変わりました。
自分たちが「業務」の名のもとに、知的作業のために活用していると信じてきた時間の多くが、じつはたんなる「作業」に費やされていたことがわかったからです。
電通では、部署ごとに数回ずつ社員ミーティングを開催しました。そこで「工程棚卸しリスト」を精査していきました。
工程のリストは全社で数万件にも及びました。その一つひとつについて、現場の意思を尊重しながら「工程を高速化できないか」「工程を省略できないか」「工程といわず、業務そのものをなくせないか」を検討していったのです。
先ほどの「会議資料作成業務」でいえば、工程①「情報収集」は社外の有料情報サイトを活用する案が出ました。いまなら生成AIも使えますね。業務③「資料作成」も、AIで下書きすればいいじゃないか、という考えが浮かびます。
そして、ハイライトは⑤「会議室での紙の資料セットアップ」です。