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電通だけの話ではない過労死問題

 大手広告代理店・電通の女子社員が2015年のクリスマスに自らの命を絶った。これが月100時間以上の残業による過労死と認定されたことから、この11月7日、東京労働局の加重労働撲滅特別対策班などの労働基準監督官が電通本社と3支社に捜索に入る事態になった。労働組合と取り決めた協定の上限を超える残業をさせた労働基準法違反の疑いだ。

 この出来事を機に、電通あるいは広告業界のみならず、わが国の雇用環境、さらにはビジネスの構造などについて、問題点を指摘する声が噴出した。

 わが国の労働時間の長さと生産性の低さは以前から問題になっている。ワークシフト研究所のまとめによると、2014年のわが国の国民一人当たりGDPは7万2994ドルでOECD加盟34か国中21位に過ぎない。ところが、労働時間は長く、わが国の年間1729時間は北欧・ドイツ・オランダの約1.2倍になる。当然、1時間当たりの労働生産性41.3ドルはアメリカの約6割だ。

 こうなる原因はいろいろと考えられる。たとえば、欧米の企業の場合、ジョブディスクリプションが明確になっていて、従業員は基本的に決められた仕事をこなせばいいことになっている。ところが日本の企業の場合は限定されないことが多い。成果主義や目標管理制度の普及に伴い、社員等級や役職ごとの職務内容を定義する動きが見られるようになったが、まだまだあいまいだ。その結果、社員には次から次へと仕事が押し寄せてくることになる。

 国際化が進み、海外との連絡や調整のために深夜や早朝に勤務をせざるを得なくなっているという指摘もある。