グループ会社を含めて30年以上勤務した電通で利益率を向上させつつ、残業時間を大幅に短縮するという経験を著した『鬼時短』(東洋経済新報社)が話題になっている。
現在はコンサルタントとして企業に「時短から始める企業改革」のアドバイスをしている著者の小柳はじめさんは、以下の「3つの原則」を貫けば、劇的な「時短」の達成とともに、会社が驚くほど変わり始めると明かしている。
①時短は「社員のムダな動きをやめさせる」ことではない
②時短は「会社が社員に強いているムダをなくす」ことである
③時短は「会社から社員への最高のもてなし(リスペクト)」である
そのエッセンスの第3回。
※この記事は、『鬼時短』(東洋経済新報社)から一部抜粋・編集したものです。
(小柳 はじめ:Augmentation Bridge代表)
クライアントが激怒! さあどうする?
時短への取り組みは、トップが不退転の意思で臨んでいることを社員に知ってもらうことが大切です。
時短を進めていくと、社内外で大小さまざまなトラブルが必ず発生します。社内での反発はなんとか説得できたとしても、社外からの反応には気を遣います。とくに大口のクライアントから反対された場合、トップが毅然とした態度で時短の意義を説明し、納得してもらえるかどうかは、改革の成否にかかわる大問題です。
社内で威勢のいいことを言っていたのに、大口クライアントからのクレームであっさり時短を取りやめるようでは、社員は会社への不信感を募らせるだけでしょう。最悪なのは、クライアントの圧力にトップが日和ってしまい、なおかつ対応を現場に丸投げするというパターンです。
「社長!某メーカーさんが『時短なんてけしからん』とめちゃくちゃ怒ってます。夜の10時から会議をやると言われたのですが、どうしましょうか?」
「ああ~、それはしかたないね。とりあえず、その日は夜10時になってもビルを開けて会議につきあってあげて。うまくやっといてよ」
こんな対応でお茶を濁そうものなら、改革などできっこありません。たとえクライアントからのクレームはやり過ごせたとしても、現場に「やっぱり社長は本気で時短をやるつもりはないのだ」というあきらめムードが浸透してしまいます。
そのあとでいくら威勢のいい言葉を並べても、もはや社内でまともに受け取る人間はいないでしょう。
時短を推し進めようとするときに問題となるのは、外部のステークホルダー(利害関係者)との関係です。
その過程で起こるさまざまなトラブル処理を、トップが責任をもって引き受ける覚悟が何よりも重要です。トップに覚悟があれば、トラブル発生というピンチを、社内に改革への決意を浸透させるチャンスに転じることができるのです。