ロシア軍の侵攻直後、ミサイル攻撃を受けて黒煙が上がるウクライナの首都キーウ(2022年3月1日、写真:ロイター/アフロ)

 ウクライナでの戦いは、ロシアが一方的に侵攻した戦いである。

 ロシアが侵攻していなければ、この戦争は起きてはいなかった。ロシアは侵攻後、占拠した地域で市民を残酷に殺害してきた。

 ミサイルや砲弾で市街地を爆撃し、多くの市民を殺害した。そこに、軍事施設があるわけではなく、市民の殺害を狙って爆撃したのだ。

 ウクライナの人々は苦しみ、悲しみ、兵士となった市民も血を流して、耐えて戦っている。

 ウクライナの人たちのロシアに対する憎しみは、永遠に消えることはないだろう。

 ウクライナの人々が「戦争は早く終わってほしい」と願っても、侵攻しているロシアがやめない限りは終わらない。

 今回の侵攻で欧州諸国や日本は、ロシアによる戦争行為が自国に及ぶ危機を感じ、あらゆる関係においてロシアは絶対にパートナーとすることができない国として、その脳裏に深く刻まれたことだろう。

1.両軍は今後の戦いをどう見積もっているか

 2023年年末の記者会見で、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は次のように発言している。

「我々が目的を達成すれば(ウクライナに)平和が訪れる」

「前線のほぼ全域で我が軍の状況は、控えめに言っても改善しつつある。我が軍は作戦を活発に展開する段階にある」と。

 プーチン氏が言う「平和が訪れる」というのは、現実には「我々の要求を受け入れなければ、戦争はやめない。やめてほしければ、我々の要求をすべて受け入れよ」と言っていることと同じである。

 全く理不尽な話だ。ロシアはそうした国なのである。

 ウクライナ侵攻から2年が過ぎ、攻防が交代する浮動状況においても、両軍は今後の戦いがかなり見えてきていることだろう。

 今の戦況から、ウクライナとロシアは今後、どのような戦いを見据えているのだろうか。また、何を達成したいとしているのだろうか。

 両軍が具体的に達成できる目標はどこなのか。

 それらを現実的な視点、つまり現在の両軍の戦力(戦える力)、これまでの戦いで見えてきた司令官等の戦略・戦術能力、軍部隊の戦いの視点で、考察してみたい。

 これらを考察することによって、今後、両軍がどのラインで停止するのかを、そして、どのラインに達成すれば休戦の話が進むのかを考えたい。