ポスト・プーチン最有力はパトルシェフ農相

 ロシアの新興メディア「後継者」は、SNS「テレグラム」にプーチン大統領の後継者ランキングや要人の動向を随時投稿している。2月1日付の「後継者ランキング30人」のトップ5は、①ドミトリー・メドベージェフ安全保障会議副議長(前大統領)、②セルゲイ・キリエンコ大統領府第一副長官、③ミハイル・ミシュスティン首相、④ドミトリー・パトルシェフ農相、⑤アンドレイ・トゥルチャク上院第一副議長(与党・統一ロシア書記長)――という顔ぶれだった。(https://t.me/preemnik/6756

 このランキングは、大統領の信頼、大統領との親密さ、地位と経験、将来性、エリート内の支持、公共政策の知識と能力の6点を基に選定したとしている。このうち、4位のパトルシェフ、5位のトゥルチャク両氏は世襲政治家であり、21位のボリス・コワルチュク・エネルギー統一機構会長と併せ、3人の二世候補がランク入りしている。

 パトルシェフ農相は政権を支える強硬派、ニコライ・パトルシェフ安保会議書記の長男で、サラブレッドとして内外の専門家から後継候補と目されてきた。経済学博士号を持つ銀行家出身で、農業銀行頭取を経て2018年に40歳で農相に抜擢された。連邦保安庁(FSB)アカデミーも修了してFSB中尉の称号も持つ。オリガルヒとシロビキの双方から支持を受けやすいようだ。

 ロシアの農業は好調で、農相は政財界の評価も高く、昨年9月のレジェップ・タイイップ・エルドアン・トルコ大統領の訪露では首脳会談に同席した。ただ、肉や卵の価格高騰で責任を押し付けられ、プーチン大統領は12月のテレビ会見で、「最近農業大臣と話し、卵はどうかと尋ねると、彼は大丈夫だと言った。しかし、生産量は増えていない。この点は遺憾であり、政府の失態だ」と国民に向け謝罪した。

 反プーチンのアカウント「SVR(対外情報庁)将軍」は、父のパトルシェフ書記が長男の後継就任を望み、各方面に根回ししているとし、農相をポスト・プーチンの最有力候補と位置付けた。

 これに対し、上記のメディア「後継者」は、「農業は政権の重要テーマであり、政府は農業への大規模投資を導入した。農相は強固な地位を築き、それを固めている」「パトルシェフは次の内閣改造で副首相候補だ」とし、まず副首相として階段を上るとみている。

メドベージェフ・ジュニアも政界進出か

 5位のトゥルチャク氏は、大統領のペテルブルク時代の柔道仲間で大富豪のアナトリー・トゥルチャク氏の長男。2017年まで8年間プスコフ州知事を務めた後、与党の書記長に就任。プーチン大統領の熱烈な親衛隊として知られ、ウクライナ侵攻を強く支持する。知事時代、反政府系記者を襲撃させ、負傷させた疑惑がある。

「後継者」は、「与党が大統領選を支える体制になっており、党書記長として地位を強化した。この1年で基盤を固め、次のキャリアアップへの準備が整った」と投稿した。ウクライナ東部、南部の4州を頻繁に訪れ、併合プロセスを強化した。

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