- 中東情勢が緊迫し、ウクライナ情勢はこう着状態、そして中国の軍事侵攻による台湾有事が懸念される中、世界最強・米軍の弱体化が危機的状況にある。
- 国内産業の「脱工業化」が進行し、物理的な「兵器」を造る力が衰えてきた。特に原子力潜水艦などの造船能力が著しく低下しており、台湾有事などへの対応力が懸念される。
- 兵力増強もままならない。人手不足の中、民間企業との採用競争で負けているほか、そもそも肥満により若者の約4分の3は兵士に「不適格」という窮状だ。(JBpress)
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
昨年10月7日に始まったイスラエル・ハマス間の戦闘開始から4カ月が経過した。中東情勢の緊迫化を受けて、米国の役割が改めてクローズアップされているのではないかと筆者は考えている。
開戦直後に空母打撃軍を派遣するなど、米国は軍事面から地域の安定化に尽力している。これに対し、中東地域で存在感を高めたとされる中国の貢献度は皆無に等しいと言っても過言ではないからだ。
オバマ元大統領は2013年に「米国は『世界の警察官』の立場から降りる」と述べたが、「困ったときの米軍頼み」の構図は今も変わっていない。
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によれば、米国の2022年の軍事費は8769億ドルと世界第1位、世界の軍事費に占めるシェアは39.2%とダントツだ(中国は2920億ドルで第2位)。
だが、世界最強と言われる米軍も深刻な問題に直面しているようだ。