自民党の政治刷新本部の会合に臨む岸田首相。左は茂木幹事長、右は麻生副総裁。一度は「解散」を言明した派閥だが「政策集団」として存続することになった=1月23日午後、東京・永田町の党本部(写真:共同通信社)自民党の政治刷新本部の会合に臨む岸田首相。左は茂木幹事長、右は麻生副総裁。一度は「解散」を言明した派閥は「政策集団」として存続することになった=1月23日午後、東京・永田町の党本部(写真:共同通信社)

(朝比奈 一郎:青山社中筆頭代表・CEO)

 自民党を直撃した派閥パーティー券収入のキックバック問題は、岸田文雄総理の岸田派解散という決断により、二階派・安倍派を巻き込んでの「派閥消滅」という事態になりました。後知恵的には、岸田総理としては、「この手しかなかった」ということではありますが、1月18日の総理の電撃的な宣言が流れを作り、論点が裏金問題・個々人の不正そのものから、派閥解体という大きな話にずれたというか、拡大したというか、いずれにせよ、より大きな問題に変化させたことは、凄い発言・決断だったと思います。

 実際に、各種調査でも、政権支持率は、下げ止まっていたり、むしろ少し上昇していたりと、国民からも、この「英断」は一定の評価をされているように見えます。かくいう私も、この決断は凄いことだし、かくなる上は、派閥は解消した上で、派閥が担っていた資金配分や人材の育成や管理(派閥推薦など)の機能は、自民党全体の方に返上して、むしろ党のガバナンスを透明化し、しっかりして行くことしかないとは思います。

 とはいえ、正直に言えば、この事態に私は、一国民として当惑しています。

「安倍派解散」は中国を喜ばせた?

 パーティー券収入を政治家にキックバックして裏金化させるという不正は絶対に正さなければなりませんが、「派閥解散」という決断が今後の日本の政治にどのような影響を及ぼすのか、まだ見通せないからです。よりはっきり言えば、今後の党全体のガバナンス改革などがうまくいかなければ、日本の政治が大きく流動化し、特に対外関係などにおいて国益を大きく損ねる事態にもなりかねないと危惧しています。

 自民党内の派閥には功の部分と罪の部分があったと思います。罪の部分で言えば、お金や人事を取りまとめる中で、そのプロセスにおいて不透明なお金が飛び交ったりすることがありました。私見ではあと、派閥の親分が、総理総裁を選ぶ権利(議員の一票一票)をとりまとめ、それを「今回に岸田に賭ける」など、いわば、所属議員の意志とは別に、親分の意志でゆがめてしまっていたところが大きな問題だったように思います。

 せっかく、選挙民の付託をうけて自民党の国会議員となり、日本国の総理を事実上選ぶ一票(=自民党総裁を選ぶ一票)を行使できるのに、それを自分の意志とは別に派閥の親分に委ねてしまっていたのです。特に、自派閥の親分を総理にすべく当該派閥に参加するならともかく、具体的に言えば、二階派や麻生派などの構成員は、二階さんや麻生さんが今後総理になる可能性がほぼゼロである中、その貴重な権利を親分に委ねてしまっていたことになります。これは実は由々しき問題だと思います。

 一方で、派閥の功の部分で言えば、政策集団として、その派閥のカラーを反映した提言や行動で、政治の世界を活性化させてきました。宏池会といえばリベラル路線とか、清和会はタカ派が多い、などが最近は典型で、そうしたカラーを反映した政策提言や行動を団結してとることで日本の政治を動かしてきました。良くも悪くも自民党の「派閥」は、そうした政策志向性の近い人が集まって集団で力を行使する日本の政治の一種のプラットフォームだったと言えます。そのプラットフォームが崩れようとしています。

 そして、この日本の状況を中国はニヤニヤしながら眺めているのではないでしょうか。安倍派は他界した安倍元総理を筆頭に、対中国強硬派が数多く集う派閥として知られていました。その安倍派が、キックバック問題で世間やメディアから叩かれ、ついには解散すると決断するところまで追い詰められてしまいました。この結果、中国に対して強くものを申せる政治集団はなくなってしまうかもしれません。中国としては、願ってもない状況が生まれるかもしれないのです。