2024年も2月16日から3月15日まで確定申告が行われる。投資関連の申告で気を付けたいのが、株式や株式投資信託の配当を得ている投資家だ。昨年まで配当所得の申告を行ってきた人は、申告方法の変更に留意する必要がある。一方、高配当の米国株や米国の高配当株ETF(上場投資信託)などに投資している人は、米国で課税された分を取り戻すチャンスとなる。24年の配当所得の申告のポイントを紹介する。
(森田 聡子:フリーライター・編集者)
配当株投資は長期投資の王道
新NISA(少額投資非課税制度)で個人の株式投資熱が高まる中、投資家の関心を集めているのが「配当株投資」。株式の値上がり益より安定した配当を狙い、高水準の配当を出していたり、継続的に配当額を増やしていたり(増配)する銘柄に投資する手法のことだ。
背景には2023年3月に東京証券取引所が、保有する純資産に対して株価が安過ぎるプライム・スタンダード両市場の低PBR(株価純資産倍率)企業に対し、株価を引き上げるための具体策の開示を要請したことがある。これを受け、23年の株式市場では安定株主獲得に向けた配当強化の動きが鮮明になった。
投資家の立場でもいったん投資すれば毎年利益の分配が受け取れる配当株投資は、NISAに代表される長期投資の王道であり、利息を好む日本人のマインドに合った手法と言えるだろう。
ただし、ビギナーには気を付けたいことがある。
配当所得を申告した方が税負担が軽減されることも
税務上の取り扱いだ。配当の利益は通常の株式の売買益とは税務上の区分が異なるのだ。売買益は「譲渡所得」だが、配当は「配当所得」扱いとなる。
配当に課税されず申告が不要になっているNISA口座は別として、配当を受け取る際には20.315%の税金(所得税・復興特別所得税・住民税の合計)が徴収され、原則、これで課税関係は終了となる(源泉分離課税)。
しかし、配当所得を申告して他の所得とは別に独自に税額を計算する「申告分離課税」や、給与など他の所得と合算して課税する「総合課税」を選ぶこともできる。投資家によっては、あえて配当所得を申告した方が、税負担が軽減されることもある。
例えば、同じ年に株式や株式投資信託で損を出した人は、その損失分を配当から差し引いて配当の利益を圧縮することができる。これを「損益通算」と言い、損益通算を行う場合は申告分離課税を選ぶ必要がある。