政府は、現在2118億ユーロ(33兆8880億円)であるKTFの予算規模を27年までに約450億ユーロ(7兆2000億円)減らす。産業界や家庭の暖房設備の脱炭素化には予定通り助成金を交付するが、24年末に予定されていたEVの購入補助金廃止を今年12月17日に前倒しした他、太陽光発電関連の助成金を減らす。
さらに政府は自動車と暖房の燃料にかかっている炭素税率の引き上げを前倒しにしたり、国内で運航される旅客機向けのチケット税を導入したりするほか、プラスチック賦課金や農業従事者のディーゼル車両用軽油補助金など、二酸化炭素削減の原則に反する補助金を廃止する方針だ。
総体的に見ると気候保護プロジェクトにとって最も重要な財源であるKTFに大ナタが振るわれて、ここを所管するハーベック大臣が「負けた」形だ。再エネ業界、電力業界や自動車業界、農民たちから強い不満の声が出ている。また連邦議会は12月15日に閉会してクリスマス休暇に入ったので、24会計年度の予算を今年中に連邦議会で可決させることは不可能になった。
連立与党への支持率が軒並み下落
違憲判決による混乱は、政権党に対する国民の不信感を増幅した。ドイツの世論調査機関INSAが11月25日に発表した世論調査の結果によると、SPDへの支持率は、21年9月26日の連邦議会選挙での得票率に比べて9.7ポイント下がった。緑の党への支持率は2.8ポイント、FDPへの支持率は5.5ポイントそれぞれ減った。3党の支持率を合わせても34%にしかならず、過半数に達しない。
逆に野党キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)への支持率は過去約2年間に5.9ポイント、右翼政党ドイツのための選択肢(AfD)への支持率は11.7ポイントも増えた。
最も苦しい状況にあるのは、リントナー財務大臣だ。ドイツでは小政党の乱立を防ぐために、得票率が5%に達しない政党は、連邦議会で会派として議席を持つことができない。FDPへの支持率は低空飛行を続けており、今後の予算危機の展開によっては、次の総選挙の得票率が5%台を割る危険もある。
しかもFDPの一部の党員は、「我々は緑の党とSPDに対して、環境問題などをめぐって譲歩し過ぎているために、支持率が低下している」として、連立政権から離脱することを求めている。彼らは500人の党員の署名を集め、FDP執行部に対して、連立政権から離脱するべきかどうかについて、党員に対する意見調査を実施することを要求した。党の規約によると、執行部は500人分の署名が集まった場合、党員に対する意見調査を行わなくてはならない。この意見調査の結果には、拘束力はない。つまり仮にこの意見調査で半数を超える回答者が連立政権から離脱するべきだと答えても、党執行部が離脱を強制されるわけではない。ただし、そのような結果が出た場合、リントナー財務大臣への圧力がさらに高まることは確実だ。
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