58歳の誕生日を迎えた秋篠宮さま58歳の誕生日を迎えた秋篠宮さま(写真:AP/アフロ)

(つげ のり子:放送作家、皇室ライター)

皇太子と同等の待遇である「皇嗣」の秋篠宮さま

 11月30日、秋篠宮皇嗣殿下は、58歳のお誕生日を迎えられた。

 振り返れば、秋篠宮さまが「皇嗣」となったことを広く内外に宣明する国事行為、「立皇嗣の礼」が執り行われたのは、今から約3年前の令和2年11月8日であった。当時は新型コロナウイルスが猛威をふるっていたこともあり、4月に執り行う予定が半年ほど延期された。

 時を置かず、皇太子の守り刀である「壺切御剣(つぼきりのぎょけん)」が、天皇陛下より親授され、皇太子と同等の立場になられたのである。

 江戸時代後期の光格天皇以降、天皇の地位は「親から子」に継承されてきたが、次世代の皇位継承は「兄から弟」へと変わる。しかし、これは決して珍しいことではない。

 戦前、昭和天皇は2男5女に恵まれたが、長女の故東久邇成子さんから4人連続して女性であったため、今の上皇陛下がお生まれになる昭和8年12月まで、昭和天皇の弟宮であった秩父宮雍仁(やすひと)親王が「皇嗣」だった。

 とは言っても、立皇嗣の礼のような儀式は行われておらず、また昭和天皇にお世継ぎとなる男子が生まれないとも限らないため、皇太子と同等の扱いは受けない「皇嗣」であった。

 歴史をひもとけば古くは壬申の乱によって、兄の天智天皇の崩御後、その皇子に反旗を翻し、皇位を奪った弟の天武天皇の史実は有名だが、これは天皇が絶大な権力をもっていた時代の争いに過ぎない。

 直近の例で言えば、江戸時代に最後の女性天皇となった第117代後桜町天皇は、弟の桃園天皇の崩御を受けて「弟から姉」という形ではあったが、血のつながった姉弟で即位している。この時は、桃園天皇の皇子(後の後桃園天皇)がまだ若く、成長するまでのつなぎとして皇位を継承したのであった。