マニラにあるフィリピン沿岸警備隊の本部を訪れた岸田文雄首相(11月4日、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 2023年11月3日、フィリピンの首都マニラにおいて、岸田文雄首相およびフェルディナンド・マルコス大統領臨席の下、越川和彦在フィリピン日本大使と、エンリケ・マナロ外務大臣との間で、6億円を供与額とする「政府安全保障能力強化支援(OSA:Official Security Assistance)」に関する書簡の署名・交換が行われた。

 本支援は、フィリピン海軍に沿岸監視レーダーシステムを無償で供与するものである。本件は、OSA創設後初めての案件となる。

 OSAは、2023年4月5日、国家安全保障会議において創設された、同志国の軍等に対する資機材供与やインフラ整備等を通じて、同志国の安全保障上の能力や抑止力の強化に貢献することにより、我が国との安全保障協力関係の強化、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出および国際的な平和と安全の維持・強化に寄与することを目的とする、新たな無償による資金協力の枠組みである。

 2023年11月13日付のNHKニュースウェブは次のように報じている。

「OSAは同志国との間で安全保障分野での協力を深めるため、他国の軍隊に防衛装備品などを供与する新しい枠組みで、今月フィリピンとの間で行われた首脳会談で、沿岸監視レーダーをOSAの枠組として初めて供与することで合意している」

「このほか今年度は、バングラデシュに警備艇を供与する方向で最終的な調整に入っているほか、マレーシアやフィジーにも実施することとしていて、さらに来年度は、ベトナムとアフリカ東部のジブチを候補とすることを決めた」

「ベトナムは南シナ海の島の領有権を中国と争っているほか、ジブチは自衛隊の拠点があり、日本としては装備品の供与を通じて関係を強化したい考えである」

 さて、日本はこれまで、外務省や国際協力機構(JICA)を中心として開発途上国に対する政府開発援助(ODA)を実施してきた。

 また、安全保障に関連する分野では防衛省が能力構築支援および防衛装備・技術移転など、海上保安庁がODAの枠内で 海上保安能力向上支援および巡視船・海上保安機材などの様々な枠組みで国際協力を行ってきた。

 OSAの枠組みと、ODAや能力構築支援、防衛装備・技術協力の枠組みとの違いは、次の通りである。

 ODAでは「非軍事」という原則が存在し、軍事目的の支援を行うことは不可能である。他方で、OSAはむしろ同志国の軍を主たる支援対象として想定している。

 また、能力構築支援および防衛装備・技術協力は、ODAとは異なり、軍などを対象とすることが可能だが、前者は装備品の供与やインフラ整備といった物的支援ができない。

 後者は防衛装備品の移転や共同研究などが可能だが、不用品・用途廃止品として認定されたもの以外は無償で供与できない。

 ところが、OSAの創設により、既存制度では不可能だった同志国の軍などを対象とした無償の物的支援(資機材の供与やインフラ整備)が可能になった。

 これにより、従来のODAでは難しかった軍民共用のインフラの整備や、防衛装備移転三原則等の枠内であるが新造された防衛装備品の供与が可能となった。

 ちなみに、2023年度当初予算は、ODAは5709億円(ピークの1997年度の1兆1687億円から半減)であるのに対してOSAは20億円である。

 ところで、本稿では、創設して間がないため国民にあまり認知されていないOSAの概要について述べてみたい。

 初めに、OSA等に関連した事象について述べ、次に国家安全保障会議で決定された「政府安全保障能力強化支援(OSA)の実施方針」について述べる。

 最後、我々にあまり馴染みのない同志国について述べてみたい。