常勝ドジャースを築いた元ウォール街の投資アナリスト
前出イライアスは2010年代にアストロズをどん底から黄金時代に導いたジェフ・ルーナウ元GMの片腕で、ルーナウが用いた手法をオリオールズで再現してみせた。イライアス自身、イェール大卒という頭脳の持ち主であることに加え、その相棒として元NASA(米航空宇宙局)のエンジニアが10年以上付き添っている。
ワールドシリーズを戦ったレンジャーズのクリス・ヤングGMとダイヤモンドバックスのマイク・ヘイゼンGMは共にプリンストン大の出身という高学歴だ。過去11シーズンで10度の地区優勝と圧倒的な結果を残しているドジャースの編成トップ、アンドリュー・フリードマン(2014年10月就任)は元ウォール街の投資銀行アナリストから野球界に転身した経歴を持っている。
フリードマンは2005年に28歳の若さでレイズ(当時の名称はデビルレイズ)のGMに就任すると、球界のお荷物といわれた球団を立て直して「低予算でも勝てる」組織を作り上げた。その実績を買われてドジャースに引き抜かれ、現在の年俸は非公式ながら1000万ドル(15億円)ともいわれている。強いチームには一流の頭脳を持つ優れたフロントが欠かせない。
ワールドシリーズ終了翌日に正式にFAとなった大谷は、球団からのクオリファイングオファー(球団がFAとなる選手に対して遺留の意思があることを表明する契約提示)を拒否して改めて来季の所属先を模索することになるだろう。WBCで見せてくれた熱い戦いを望むならば、ぜひ優れたフロントとオーナーが良好な関係を保っている球団を選択してほしい。球団としていかに優勝を狙える戦力を組み立てて、その1ピースとして大谷の才能を生かせるか。そのビジョンが明確な球団と契約することができたなら、世界の頂点で雄叫びを上げる大谷をもう一度見ることができるのかもしれない。
大冨真一郎
(おおとみしんいちろう)メジャーリーグ解説者。1976年生まれ。IT企業勤務を経て2002年に渡米し2005年までシアトル等でMLBを取材。帰国後も専門誌に寄稿を続け『スカパー!MLBライブ」「DAZN」「ABEMA」「SPOTV NOW」等で解説者を務める。
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