熱戦が繰り広げられるワールドシリーズ、日本人選手でそれを成し遂げたのは、上原浩治、井口資仁、松井秀喜氏ら11人。その裏では多くの「人」の支えがある。

 昨年のカタールワールドカップに、今年の3月にワールドベースボールクラシック。最近ではバスケットボールとラグビーのワールドカップが注目され、来年には、アマチュアスポーツの祭典となるオリンピックがパリで開催される。

 日本選手の躍進はすさまじく、多くの人がその一挙手一投足に注目する時代になった。

 そんな中で、より重要性を増しているのが「スポーツマネジメント」業界だ。日本のスポーツの成長を支えるキーマンたちであり、一方でその全容はあまり知られることがない。

 元メジャーリーガー・上原浩治や競泳の萩原智子らのマネジメント、トレーナーのマネジメントや派遣、スポーツファシリティのコンサルティングなどを行うスポーツバックスの澤井芳信氏が自身の経験からその仕事を赤裸々に綴る。

家賃8000円、スポーツマネジメントの現実

 スポーツマネジメントの世界で生きるということは、はっきり言って酷である。

 いくつものマネジメント企業がひしめく。所属するアスリートが多いほど、そのサポート量は増える。一方で、少数だとアスリートの結果に会社の運営自体も左右されてしまう。

 2013年の会社設立からちょうど10年経った今、その思いを強くしている。

 実は最近、「アスリートをプロデュースしたい!」といった意気込みでこの業界にやってくる人たちも多い。それだけ昨今のアスリートの活躍はすさまじいのだと思う。

 嬉しい傾向ではあるが、冒頭にも書いたとおりスポーツマネジメントの世界は「酷」である。

 スポーツビジネスのこれまでを語る上で、ここではまず、会社を興したきっかけとこの仕事に求められる「力」について紹介したい。

 2013年8月9日。

 海の向こうでは、メジャーリーグ・レッドソックスがア・リーグ東地区で優勝争いを繰り広げていた。このシーズン、チームがワールドシリーズを制したときに胴上げ投手になる上原浩治さんがクローザーを担っていた。

 この日、スポーツマネジメント会社「スポーツバックス」は東京・港区の月額8000円のバーチャルオフィスで産声を上げた。設立時になけなしの貯金をかき集め、資本金10万円で登記した。

 会社にある「財産」は、専属マネジメント契約を結んだ上原浩治さんと、そしてシドニー五輪競泳女子日本代表の萩原智子さんの2人。

 多くの「経験」は最初にクアイアントとして任された2人の恩恵から得たものがほとんどだ。

 月額8000円のバーチャルオフィスからスタートした弊社は13年の“上原さんフィーバー”(2013年、ボストン・レッドソックスがワールドシリーズ制覇。上原浩治が胴上げ投手となった)で軌道に乗る大きな後押しをもらった。