1995年9月25日、警視庁に移送されるオウム真理教の松本智津夫死刑囚(写真:共同通信社)

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

ゴールデンタイムに「事実に反する」内容を

 日本テレビが制作し、毎週火曜日のゴールデンタイムに放送されている『ザ!世界仰天ニュース』といえば、2001年から続く長寿番組だ。タレントの中居正広と笑福亭鶴瓶が司会を務め、世界各国で起きた事件や事故など文字通りの“仰天ニュース”を、再現ドラマなどを混じえてドキュメンタリー形式で取り上げる。

 今月25日の放送は、午後9時30分から2時間にわたってオウム真理教事件を取り上げていた。日本テレビの公式番組ホームページによると、サブタイトルは「地下鉄サリン事件はなぜ起こったか マインドコントロールの真実」となっている。これだけを見ると、地下鉄サリン事件は教団のマインドコントロールによって引き起こされたように読み取れる。

 また、番組の公式ツイッターでは「なぜ若者は騙されたのか? マンドコントロールSP」とある。これではまるで、若者たちが教団のマインドコントロールによって騙され、一連の事件を引き起こしたようだ。

番組画面には「マインドコントロールの恐怖」の文字が…(『ザ!世界仰天ニュース』番組画面より)

 番組を視聴すると、教団でサリンを生成した土谷正実元死刑囚を取り上げ、彼はマインドコントロールされていたと断定している。

 信者たちの教団施設内での過酷な修行や、薬物を使った「イニシエーション」と呼ばれる儀式などを紹介しながら、坂本弁護士一家殺害事件や松本サリン事件のあらましを再現することで、あたかも事件はマインドコントロールによるものとの印象を与える。

 構成からして、事件の背後にマインドコントロールあったとして、人の命を顧みない事件を犯してしまうほど、マンドコントロールは恐ろしいものだと訴えている。

 だが、これは事実に反する。虚報であり、視聴者に誤解を与える印象操作としか言いようがない。

 なぜなら、オウム真理教事件が裁かれた一連の刑事裁判で、事件とマインドコントロールの関係はすべて否定されているからだ。