6月26日、ミャンマーのヤンゴン郊外で、当局により押収された大量の違法薬物が焼却処分された(写真:AP/アフロ)

 クーデターから約2年半を迎えたミャンマーで麻薬であるアヘンの原料であるケシの栽培が拡大している。

 クーデターで軍事政権が実権を握ったミャンマーは、国際社会からの制裁もあり経済活動が低迷した。そこで農民の中には、手っ取り早い換金作物であるケシの栽培に“転作”する者が増えている。ミャンマーという国は、かねてから貧しい農民たちに代替合法作物の栽培を促す試みが繰り返されているが、メタンフェタミンの主要な生産・輸出国であり、アフガニスタンに次ぐ世界第2位のアヘンとヘロインの生産国という顔を持っているのである。

根深いミャンマー経済のアヘン依存

 ミャンマーでアヘン栽培が減らない要因としては、軍政がアヘン栽培を事実上奨励し、隣国タイや中国などへ密輸して外貨を獲得しようとしている、との指摘もある。軍政傘下の民兵組織が、戦闘員の食糧や給与を賄うためにアヘン製造に関与しているという声もある。その一方で、広大な地域を支配する一部の民族武装組織もまた、活動のための資金源として違法薬物を生産している実態もあるようで、ミャンマーのアヘン経済への依存は実に根が深いと言わざるを得ない。

 こうした中、6月26日の国際薬物乱用・不正取引防止デーに合わせ、ミャンマー当局は全土から押収した大量の違法薬物を焼却した。その量は実に4億4600万ドル(およそ620億円)以上相当に値するという。

6月29日、 国際薬物乱用・不正取引防止デーに合わせて、国内で押収された違法薬物の廃棄イベントを前に、薬物を検分するヤンゴン地域首相のソー・テイン氏(写真:AP/アフロ)

 ミャンマー当局がこのような行動に出た背景には、今年1月に国連の機関である薬物犯罪事務所(UNODC)が公表した報告書の存在が影響したのは間違いないだろう。

「ミャンマーにおけるアヘン調査2022年、耕作・生産とその影響」と題する報告書の中で、ミャンマーでは2021年から2022年にかけてケシを栽培する耕地面積が約4万10ヘクタールとそれ以前に比べて33%拡大したと指摘されていた。潜在的な生産高も前年比90%増の790トンとなるなど、ミャンマーのアヘン経済は「大幅な拡大」を示していると断じている。