ryuchellさんは27歳だった。この年代の自殺が多いことは、日本の統計が示す通りの結果であり、典型である。

もともと若者の自殺が多いところにSNSでの誹謗中傷も

 ただ、ここでもうひとつ踏み込んで考えなければならないのは、SNS上に絶えることのなかった大量の誹謗中傷が自殺に追い込んだとする点だ。

 ネット上の誹謗中傷をめぐっては、テレビ番組にも出演していた女子プロレスラーの木村花さんが20年5月に22歳の若さで自殺したこともきっかけとなって、22年7月に侮辱罪を厳罰化した改正刑法が施行されている。

 10代、20代、30代の自殺が多い日本において、少し前までスマートフォンの普及やSNSによる誹謗中傷などなかった。

 そうすると、同世代の死因の第1位が自殺であるという積年の社会問題を日本は解決するどころか、新たに自殺を誘発するアイテムを抱え込んでしまっていることになる。刑事罰を厳格化したところで効果がなければ、むしろ自殺は増えていく一方のはずだ。

 SNS上の誹謗中傷は凄まじいものがある。私もネット配信の記事やコラムをまとめるようになって、幾度となく晒され、炎上と呼ばれる状況にまでなった。時には、私の書いたものを褒める書き込みも散見するが、そうした場合は記事の内容を持ち上げる一方で、誹謗する、こき下ろす時には執筆者の名前を書き込んで個人攻撃をするという傾向にあることもわかってきた。

 理由も根拠も示さず、曖昧なまま、あるいは誤認やでっちあげの理由で個人を攻撃することは、受ける側からすると心理的な暴力、集団暴行に等しいものがある。それをわかってやっているのなら悪質であるし、SNSの閲覧の特殊性からして受けた側は精神的に孤立しやすい。そこで思考が内向的になれば、自ら命を絶つことも考えてしまう。

 ryuchellさんの自殺の原因がどこにあったのか、誹謗中傷にあったのか、定かではない。しかし、おびただしいとしか表現のしようのない誹謗中傷が存在したことは事実だ。それで慌てたように投稿を削除する動向もあったという。そこに垣間見る日本の特殊性。この根本的解決が早急に求められる。

 そうでなければ、10代、20代、30代の自殺が死因の第1位を占めるという、異常事態の解決に結びつかないばかりか、むしろ多感な世代の自殺を増長させるばかりだ。

・こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556
 ※受付時間は都道府県によって異なります
・厚生労働省HPに自殺対策相談窓口一覧があります (https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/soudan_info.html)