習近平国家主席(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

「習近平用語」が使われる法令

 7月1日、隣の中国でまた、日本には存在しない類(たぐい)の、かつ日本にも関係してくる、おっかない(?)法律が施行された。全6章45条からなる「対外関係法」である。先週、6月28日に第14期全国人民代表大会常務委員会第3回会議で可決された後、わずか3日で施行された。

 この新法、まず第1条で、制定する7つの目的について記している。

<第1条:対外関係を発展させるため、国家の主権・安全・発展する利益を維持・保護するため、人民の利益を維持・保護し発展させるため、社会主義現代化強国を建設するため、中華民族の偉大なる復興を実現するため、世界の平和と発展を促進するため、人類運命共同体の構築を推進させるため、憲法に基づいて本法を制定する。>

 このうち、習近平政権にとって真の目的は、2番目、4番目、5番目、および7番目だろう。なぜなら、1番目の対外関係を発展させるためには、こんな法律を作るよりも、習近平政権と中国外交部が日々、穏健な外交を行えばよいだけのことだからだ。3番目と6番目も同様だ。

 2番目の「国家の主権・安全・発展する権利」、4番目の「社会主義現代化強国」、5番目の「中華民族の偉大なる復興の実現」、および7番目の「人類運命共同体」は、3月に習近平政権が異例の3期目に突入して以降、さらに一段と使用頻度が上がった「習近平用語」だ。「習近平用語」というのは、習近平主席がよく強調したり、好んで使う独特の言葉のことである。

 これらの「習近平用語」には、「習近平史観」(習近平主席の歴史観)が色濃く反映されている。習近平主席の「重要講話」(習主席が公の席で話したことはすべてこう呼ばれる)で何百回と繰り返されてきた歴史観で、いまでは「習近平思想」の一部として、全国津々浦々の学校の授業でも教えられている。