(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 米WTI原油先物価格は1バレル=75ドルから80ドルの間で推移している。

 米FRBをはじめとする中央銀行の利上げによる需要減の懸念と「ゼロコロナ政策を解除した中国の原油需要が急回復する」との期待が綱引きをしている構図だ。

減産継続への足並みが揃わないOPECプラス

 まず最初に供給サイドの動きを見てみたい。

 ロイターによれば、OPEC加盟10カ国の2月の原油生産量は前月比15万バレル増の日量2897万バレルとなった。だが、OPECプラス(OPECとロシアなどの大産油国で構成)の目標を88万バレル下回っている。OPECプラスは昨年(2022年)11月から日量200万バレルの減産で合意し、2月もその目標が維持されているが、未達の状態が続いている。

 サウジアラビアのアブドラアジズ・エネルギー相は2月17日、「OPECプラスが年末まで原油生産に関する現行の政策を維持する」と述べ、OPECプラスの結束ぶりを改めてアピールしたが、内実は異なるようだ。

 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が3月3日、「アラブ首長国連邦(UAE)がOPECからの脱退を内部で議論している」と報じたことを受け、「OPECプラスの協調減産に影響が出る」との懸念から原油価格が一時急落した。