韓国の釜山港に陸揚げされた最新型の「M2ブラッドレー歩兵戦闘車」(2022年10月20日、米陸軍のサイトより)

4発で敵の空港機能をマヒできる

 北朝鮮は2月20日午前、日本海に向けて「戦術核攻撃の手段である超大型放射砲」*12発と短距離弾道ミサイル2発を発射したと発表した。

 弾道ミサイル発射は、2月18日以来で2023年に入って3回目となる。北朝鮮は、こう発表した。

「午前7時から超大型放射砲射撃訓練を実施した。600ミリ放射砲を動員し、395キロと337キロ射程の仮想標的を設定した」

「使用した兵器は戦術核攻撃手段である。4発の爆発威力で敵の作戦飛行場の機能をマヒさせることができる」

*1=米軍の「多連装ロケット砲システム」(MLRS=Multiple rocket launcher system)と同種のものとみられる。「超大型放射砲」という名前は2019年8月25日、北朝鮮の官営メディアに初めて登場し、その後、北朝鮮では「超大型放射砲」と「大口径操縦放射砲」という用語が共に使われている。弾種が400ミリか600ミリで、車両型の移動式発射台(TEL)の種類は車輪型と軌道型の両方を含む。飛行距離は400キロ前後で、韓国全域が射程に入る。核弾頭の小型化に成功していれば、超大型放射砲に戦術核の搭載も可能。金正恩朝鮮労働党総書記は2022年12月31日、「超大型放射砲贈呈式」での演説で、「軍事技術的にみて、高い地形克服能力と機動性、奇襲的な多連発精密攻撃能力を兼ね備えている」と強調している。バイデン政権は2022年3月、ウクライナへのMLRS供与を公約している。

MLRS=Wikipedia

 米シンクタンクの軍事専門家はこう指摘する。

「在韓米軍基地、韓国空軍基地の打撃を想定した訓練だったとみられる。各種ミサイルの発射や核実験の実施を含めさらなる挑発行為に出る可能性がある。核実験再開は秒読みの段階に入ってきた」

 北朝鮮による連日のミサイル発射実験に対抗して、米国と韓国は2月18日の発射を受けて朝鮮半島周辺で戦略爆撃機を投入して共同訓練した。

 自衛隊と米軍も2月19日、日本海上空で戦闘機と爆撃機が共同訓練した。

 米韓はさらに、北朝鮮の核兵器使用に対処するための机上演習を2月22日、ワシントンで行い、米国が核兵器を含む戦力で同盟国を守る「拡大抑止」(Extended deterrence)2を巡る米韓連携を確認する。

*2=拡大抑止とは、自国だけでなく、同盟国が攻撃を受けた際にも報復する意図を示すことで、第三国が同盟国への攻撃を思いとどまらせる抑止力のこと。米国は同盟国である日本や韓国に対し、核を含む「拡大抑止」の提供を約束している。「基本抑止(Basic deterrence)」が、自国の国民や領土に対する核抑止であるのに対し、「拡大抑止」は同盟国への核・通常攻撃を抑止する。拡大抑止は一般的に、「核の傘」とも呼ばれるが、厳密には、拡大抑止には「拡大核抑止(Extended nuclear deterrence)」と、通常戦力による「拡大通常抑止(Extended conventional deterrence)」がある。

Extended-Deterrence

 米韓はさらに、3月にも大規模な野外訓練を含む合同軍事演習も計画している。