バレンタイン商戦は日本独自のイベント(写真:アフロ)

 2月の日本を象徴する、甘くロマンティックなイベント“バレンタインデー”。ショーウィンドウに並ぶチョコレートは、色とりどりでさながら宝石のようだ。この「恋人や家族にチョコレートを贈る」という慣習は、日本独自の文化だということをご存じだろうか。

 例えば、日本ではチョコレートを女性から男性へ贈るが、米国では逆に男性から女性へとプレゼントをするのが一般的だ。また、海外では花やジュエリーを贈ることも多い。

 日本で「バレンタインデー=チョコレート」のイメージが定着した背景は、一説では、製菓企業がイベントキャンペーンに参画したことで発展したとも言われている。この独特な日本のバレンタインは、一大商戦の場として、今や世界中から大きな注目を集めている。

 だが、声高にジェンダー配慮が叫ばれるこのご時世に、「女性から男性にチョコレートを贈る」というのはいささか時代に逆行している感もある。日本では、こうしたもともとの文化や慣習と時代とのギャップが様々な場面で散見される一方で、実はこうした商戦がサステナブルな商品を打ち出す機会にもなっている。フェアトレードへの取り組みもその一つだ。

 フェアトレードとは公正な貿易取引を指し、立場の弱い途上国の生産者と立場の強い企業・消費者が対等に取引できるように作られた仕組みだ。

 欧米などの先進国ではフェアトレードが重視されており、小売店の棚一面がフェアトレード商品で埋め尽くされるケースも珍しくないという。商品が店頭に並ぶまでのサプライチェーンに、児童労働や生産者に対する搾取といった不公正がないかどうかに注目する消費者は多い。

 だが、日本ではフェアトレードへの意識はまだ低い。2020年における日本のフェアトレード市場規模は、ドイツと比べて18分の1(131億円程度)。さらに一人当たりの年間フェアトレード商品購入額はスイスの108分の1と、足元にも及ばない。