毎年生まれる新スター。その原点は「育成環境」だ。写真はW杯でハットトリックを決めたポルトガルの新生、ゴンサロ・ラモス。写真:PA Images/アフロ

ワールドカップが示す「世界のレベル」

「あのイランが……」

 何度も苦しめられてきた相手が、ワールドカップの地でイングランド相手にいいようにやられていた。

 グループリーグBの初戦、前半に3失点、後半にも同じ数のゴールを喫したイランは2対6で敗れた。

 相手のイングランドは優勝候補の一角とも言われる強豪。――それでも、あまりの「差」に電話の主、岡崎慎司は「現実」を見たようだった。

 ヨーロッパで感じる日本で経験してきたこととの「違い」。岡崎は、12年間の海外生活のなかで日常的にそれに接してきた。

「自分が高校時代に経験してきたことは、僕の原点で、僕にはあっていた。いまプロとしてプレーしているサッカー選手はそういう過去の成功体験があると思うんですけど、それがどんな日本人にも合うか、もっといえば変化する現代サッカーにおいて、日本の育成に大事かと言われれば、必ずしも正解ではないと思っている」

 だから岡崎はつねに学ぼうとしてきた。

 スポーツ界のヒントや世界の潮流を知るために各界のトップランナーや現場のプロフェッショナルと話す「dialogue w/」というコンテンツを始め、またその中でヨーロッパで活動する日本人指導者にトレーニング方法や哲学、半生を聞くLive配信を行う。

 行動も起こした。

 今年、地元である兵庫県に自腹で土地を購入しグランドを完成させる。

「海外でプレーしている中で、生活のなかにスポーツが当たり前のようにあるのを感じた。それが多くの人の幸せになっている。それが文化になっていて、羨ましさもあったし、サッカーの強さにも関係してるんじゃないかな、と。同じような風景を作りたかった」

 自分の経験だけに頼らず、「知らないことを知ろう」とする。知るだけではなくアクションに落とし込む。

 岡崎慎司の、日本サッカーやスポーツに対する本気度である。

 だからかつての宿敵・イランが圧倒されるシーンに再び危機感を持った。