(筆者撮影)

 最後のペナルティ・キックがネットを揺らし、クロアチア国旗がスタンドに揺れた。

 日本の選手たちは芝の上に倒れ、その横を、数分前までピッチの上でぶつかり合っていた相手が、喜びを爆発させ駆けていく。

 勝者と敗者を決めるためだけに存在するPK戦はいつ見ても残酷なものだ。

 やり直しはきかない。外したキッカーの背中に漂う後悔。次のワールドカップまでは、4年もの歳月を待たなければならない。

 クロアチアに敗れ、日本はベスト16を超えられずに大会を終えた。

 日本の選手たちは目を赤くしていた。世界の舞台で得点を決め、英雄となった者がいる。この大会が最後となるだろうベテランたち。ピッチに立てなかった者もいる。

 カタールでのひとときの戦いを終えた彼らが紡ぎ出す言葉に、それぞれの思いが漂っていた。

世界にその名を轟かせた三笘

 三笘薫はいつものように後半にピッチに立ち、いつものようにその疾走でスタンドを沸かせた。

 今大会、カタールの観衆に最もインパクトを与えた日本人選手だった。三笘はMITOMAとなり、世界はその存在を知った。

クロアチア代表のマリオ・パシャリッチとボールを奪い合う三笘薫(写真:AP/アフロ)

 左サイドを切り崩す姿に喝采がわいた。創り出す好機の数々。クロアチア戦終盤、相手の間をするすると抜けシュートを放った場面は見るものの心を揺さぶった。三苫の存在はいつしか日本の最大の武器となっていた。

 それでも、大会を終えた三笘の表情に満足感は一切なかった。