精力的にマレーシア各地を遊説する97歳のマハティール氏(筆者撮影)

 マレーシアで11月19日、総選挙(連邦議会、任期5年で定数222の小選挙区、過半数議席112)が実施される。

 2018年の前回の選挙では、マハティール元首相が率いる野党連合「希望連盟」(PH)が独立来61年間、マレーシアを統治してきたUMNO(統一マレー国民組織)を核とする与党連合「国民戦線」(BN)を歴史的な勝利で破り、政権交代を果たした。

 マハティール氏は2003年に首相を退任してから再び首相に就任したが、後継者問題などで2020年2月に政権発足後22カ月で辞任。

 国王の任命で選挙を経ず後任となったマレーシア統一プリブミ党(PPBM)を核とする「国民同盟」(PN)率いるムヒディン前首相は、2018年の選挙で歴史的敗退に甘んじたBNと連立政権を組んだが、UMNO議員の造反にあって2021年8月辞任。

 後任には、政権に影響力を増していたUMNOの副総裁、サブリ氏が首相に就任。連立与党政権は辛うじて維持されたものの、今年10月10日の議会解散時では与党連合が117議席。

 下院過半数ギリギリで、ここ数年間、連立政権の権力闘争による内紛が後を絶たず、新型コロナウイルス感染症からの経済回復以上に、政治的安定を取り戻せるかが今回の総選挙の最大の争点となっている。

 また、与野党ともそれぞれの連合がバラバラの分裂選挙となり、史上稀に見る大混戦状態となっている。

 与党両連合の支持基盤は、マレーシアの人口7割弱に相当するムスリムのマレー系。両連合とも170人強の候補者を選出し、小選挙区で与党が互いに敵対する異例の展開となっている。

 一方、前回歴史的勝利で政権交代を果たしたが選挙を経ず権力闘争の末、野党側に転じたマハティール元首相とアンワル元副首相は前回で共闘したものの決裂。双方が連合を率い、野党も分裂して戦う。

 アンワル元副首相が率いるPHは、最大の議席を維持する華人系政党(DAP)と自身が総裁を務める人民正義党(PKR)を中核に全政党を通し最大数の200人強の候補者を擁立。

 一方、マハティール元首相は総選挙に向け8月、立ち上げた祖国運動(GTA)から100人強を解散前後から猛スピードで擁立した。

 民間独立系の世論調査機関、ムルデカ・センターによる選挙権を有する18歳以上の1200人に実施した調査(10月19日から28日)では、72%が「国が悪い方向に進んでいる」と懸念を示している。

 その理由として、経済的心配とともに挙げられたのが「政治的な不安定」だった。