羽生選手が乗り越えたから自分も頑張ろう

「意思と思いを言葉にし続ける大切さも、羽生選手から教えていただいたように思います」

 羽生は実現したい目標、夢を描き、それをただの憧れとせず現実とするために努力を払ってきた。自分を奮い立たせるように、夢や目標を言葉としてきた。学生時代から応援してくる中で、その姿勢を受け止めてきた。就職活動時の話も通底する。

「中学生の頃からアナウンサーになりたいなと思っていたので、アナウンサー職しか受けませんでした。北海道から沖縄までアナウンサー職だけ出して、ほんとうにどこも内定がもらえなくて、40社くらいは落ちました。それだけ落ちると悲しいというか、アナウンサーになる未来しか考えていなかったのになれなかったらどうしようと先が見えない不安でいっぱいになりました。

 でも落ちても落ちても、平昌に比べたら自分なんてまだまだぜんぜん大変じゃないかも、衝突事故のあとに滑ったフリーに比べたら、この苦しみってまだまだだろうな、羽生選手が乗り越えたから自分も頑張ろうと、特に就職活動のときは心のよりどころとしていました」

 放送を通じて、自身の職について感じたこともある。

「アナウンサーの役割は、あまり自分を出さずに取材対象、ゲストがいたらゲストを引き立たせる、競馬中継なら事実を正確に分かりやすく伝える、そういうところが大事な職業だと思っていました。

 ただ『こだわりセットリスト』は、私がずっと、もう学生時代から応援させていただいていた羽生選手をテーマにしたということで、やっぱり自分の思いが抑えていたつもりではあるんですけど、かなり番組に入っちゃったと思うんですよね。でもその結果、なんて言うんでしょう、伝わるものがあったんじゃないかなって思っています。

 放送後にいただいたお便りとかツイートを見ていると、『藤原アナの愛にあふれた番組で、感動しました』『心のこもった番組をありがとうございます』といったお便りやツイートをたくさんいただきました。自分をそんなに出す職業ではないけれど、でも自分はこういうことを伝えたいんだっていう思いはすごく必要というか。自分が伝えたいことを明確にしたアナウンサーになっていきたいなって。人として、アナウンサーとして大切なことに気づけたような気がします」

 現在はラジオNIKKEIの強みである中央競馬実況デビューを目指し、パドック担当などを担う。

「越えなければいけない壁だなと思っています」とその目標を追いつつ、こう語る。

「フィギュアスケートって無料での通年番組がなかなかないので、ラジオNIKKEIがそのパイオニアになって、通年でフィギュアスケートを楽しめる番組を作っていけたらとずっと思っています。『こだわりセットリスト』で言えば、例えばセットリストを作っていただくなど、いずれ羽生選手に出演していただくことを目標にしていきたいです」

 番組を成立させた確固とした意思と行動とともに、夢を形にしようと追い続ける。

 

藤原菜々花(ふじわら ななか)
ラジオNIKKEIアナウンサー。2020年入社。中央競馬実況担当を目指し同番組に携わる。2022年5月に放送された『こだわりセットリスト特別編・羽生結弦選手特集』においては企画の立ち上げから取り組み、海外からも含め大きな反響を呼んだ。9月には第2弾を放送。この他『ななかもしか発見伝』『日経電子版NEWS』等も担当。