インドネシアの元司法長官、マルズキ・ダルスマン氏(写真:AP/アフロ)

 昨年2月のクーデター以降、民主政府復活を求める一般市民らを多数殺害しているミャンマー軍政について、人権侵害や戦争犯罪、イスラム教徒への虐殺行為などで法的に提訴しうることの可否を、インドネシアの元司法長官ら市民が同国の憲法裁判所に請願を提出した。

 つまり、元司法長官らは、インドネシアの国内法によって、ミャンマー軍政という外国の「政権基盤」を訴追できるかどうかの可否を憲法裁判所に問うたのである。

 インドネシア憲法裁判所によって「ミャンマー軍政の訴追は可能」と判断されれば、元司法長官は同様の動きを東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟の他国にも呼びかけ、ミャンマー軍政への「法的包囲網」で圧力をかけることも想定しており、今後の憲法裁判所の判断が注目されている。

インドネシアの国内法によるミャンマー軍政の訴追を模索

 インドネシアのマルズキ・ダルスマン元司法長官は1999年から2001年まで司法長官を務めた弁護士、人権活動家で、2017年からは国連人権理事会のミャンマー問題調査団の団長を務めている。

 インドネシアの有力誌「テンポ」が伝えたところによると、ダルスマン氏と人権活動家らは「インドネシアの憲法はインドネシア人であろうとインドネシア人でなかろうと全ての人が法の下に平等に扱われることを明記している。これは普遍的な人権の保護を意味している」と主張しているという。

 そのうえで「人権裁判所に関する法律を少し手直しするだけでミャンマー軍政が犯した数々の人権侵害をインドネシアで訴追し、裁判で審理することが可能になるはずだ」として、憲法裁判所の判断に対して大きな期待を示した。