(小林偉:放送作家・大学講師)
洋の東西を越えた、親子の愛情
ギターの神様とも称されるエリック・クラプトンの大ヒット曲に『TEARS IN HEAVEN』という曲がありますよね。
1991年3月、当時4歳半だった彼の息子が自宅マンションの53階から誤って転落し亡くなるという悲劇的な事故が起きました。悲嘆に暮れた彼が翌年、その息子へ向け「天国でまた君に会っても、俺のことを覚えていてくれるかな?」と問いかける内容のこの曲をリリース。エリックの切々とした歌声もあって、多くの人に感動を与えたのは言うまでもありません。
親から子へ、子から親へ・・・それぞれのメッセージを載せた曲というのは、洋の東西を越え、聴く者の心を揺さぶるものです。今回はそんな曲を選んでみました。
最初は、現在のロック界を代表するバンドによる、こちらの曲です。
●SOMETIMES YOU CAN’T MAKE IT ON YOUR OWN/U2
アイルランド出身。社会的なメッセージを込めた曲も多い、熱きバンドであるU2ですが、この曲はヴォーカルのボノ自身の個人的な想いを載せたものです。
長いタイトルですが、直訳すると「時には一人でやれないこともあるさ」という意味。実はボノ、14歳の時にお母さんを亡くして、その後はシングルファーザーとなったお父さんに育ててもらったという過去を持っています。
そんなお父さんもボノが40歳を迎えた2000年に亡くなってしまい、そのときに作ったのがこの曲なんです。
歌詞を抄訳してみますと「あんたはいつも、俺はタフで人に厳しいって言ってたな。でも、いつも正しい必要はない」「あんたとはケンカもしたが、受けてきた痛みを少し分けてくれても良かったんだ。時には一人でやれないことだってあるんだから」というような内容。奥さんを亡くし、必死にボノら子どもたちのために、慣れない家事をこなし、愚痴をこぼすこともほとんどなかった父へ・・・ボノからの手紙のような歌詞なんですね。
今でもボノはライブでこの曲を歌う時だけ、トレードマークのサングラスを外し、天に向かうように歌います・・・。