(北村 淳:軍事社会学者)
アメリカ軍普天間飛行場の辺野古移設に反対している玉木デニー氏が沖縄県知事に再選された。日本政府は「日米同盟の抑止力の維持と普天間飛行場の危険性の除去を考え合わせたとき、辺野古移設が唯一の解決策」であるとして、知事選の結果にかかわらず、アメリカ海兵隊の辺野古航空施設の建設を継続する決意を表明した。
しかしながら、辺野古移設が決定されてから現在に至る期間に米中軍事バランスは急激に変化し、それに対応して米軍、そしてアメリカ海兵隊(以下、海兵隊)の対中戦略は抜本的に修正されている。
はたして辺野古移設は日本政府が主張するように日米同盟の抑止力の維持にとって重要な要素なのかどうか、日本政府は軍事合理性の観点からの説明を行う義務がある。
戦略の抜本的見直しを急ぐ米軍
2001年9月11日に発生した9.11同時多発テロ攻撃以降、アメリカは国家の主敵をイスラムテロリスト集団に設定し、対テロ戦争を20年近くにわたって続けてきた。結局は、莫大な軍事費を投入し多数の戦死傷者を生み出した結果、昨年(2021年)夏のカブールからの米軍逃亡劇に示されたように、敗北した。
そのようにアメリカが対テロ戦争に血道を上げている期間、中国は海洋戦力を中心とする軍事力の強化を目を見張る勢いで続けており、一部の戦力は米軍を凌駕するに至ってしまった。中国だけではなく、ロシア、イラン、北朝鮮も、アメリカの軍事的世界支配に対する部分的障害となりうる軍事力の構築に邁進し続けている。