駅でホームドアの普及が進んでいる。設置にはホームの補強や改修が必要とされることもあって、当初は採用に二の足を踏む鉄道事業者が多いように見受けられたが、近年はその効用が確認され、都市部の主要駅ではホームドアがない駅が珍しく感じられるようになってきた。全国での普及率はまだ1割とされるが、ホームドアの設置が進み、併せてワンマン運転が普及すれば、鉄道の安全性や採算性はどうなるのだろうか。その行方を考えてみたい。
(池口 英司:鉄道ライター・カメラマン)
日本初のホームドアは1970年の大阪万博
日本の鉄道における初めてのホームドアの採用は、1970(昭和45)年に開催された日本万国博覧会(大阪万博)にさかのぼる。会場内の移動手段として建設された跨座式モノレール(桁にまたがって車両が走行するタイプ)の7つの駅のホームにドアが設置されていた。
このモノレールは自動運転を実施し、駅でのドア操作を主要な業務とする乗務員が1人だけ乗務した。自動運転のモノレールは、万博にふさわしい未来的な乗り物と評価されたが、もしもホームドアがなければ、ワンマンによる自動運転は実現できなかったかもしれない。
大阪万博は183日の会期中に6400万人もの来場者を集める大きな成功をみせたが、閉幕と同時にモノレールは廃止となった。安全性の確保に大きな効用があると目されていたはずのホームドアも、コスト面の問題もあってか、ホームの目の前を新幹線が通過する東海道新幹線熱海駅などへの設置例を除けば、その後に採用される駅はほとんどなかった。
そんな風潮が変わるきっかけとなったのは1980年代以降のことだ。