7月22日、来日したインドネシアのジョコ・ウィドド大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 インドネシア国家警察の信頼が失墜した。

 7月8日、ジャカルタ市内の警察官舎で起きた警察官射殺事件に関連し、高級幹部である警察大将が隠ぺい工作ばかりか殺害そのものに関与した容疑で身柄を拘束されただけでなく、准将クラスの幹部警察官5人も同容疑で拘束される事態になっているからだ。

 ジョコ・ウィドド大統領もこうした事態に危機感を募らせ真相解明を徹底的かつ早期に行うよう警察に指示しており、現地メディアも連日事件に関する報道を続け、国民注視の問題となっている。

 事件は、当初拘束された警察大将の妻に暴行しようとした大将の部下である警察官が射殺されたほか、大将の不倫というスキャンダラスな側面も捜査や報道で次第に明らかになり、国民の警察への信頼は完全に崩れ、もはや失望に変わりつつあるという。

事件当初は「銃撃戦」との証言だったが

 事件の概要はこうだ。7月8日午後5時ごろ、ジャカルタ市内南部ドゥレン・ティガにある警察官舎にある国家警察元内務長官フェルディ・サンボ大将の自宅にいた彼の部下ノフリアンシャ・ヨシュア・フタバラート警察准尉が銃で殺害された。

 当初の警察への届け出では、自宅内で警察官のリチャード・エリエザー2等巡査と銃撃戦の結果、ヨシュア准尉が死亡したというものだった。

 しかし関係者の供述に整合性がなく、不審な点も多かったことから関係者を追及したところ、リチャード2等巡査がヨシュア准尉を射殺後、あらためて壁に銃弾を発射したり、ヨシュア准尉の遺体に発砲した銃を握らせたりするなど「銃撃戦」を装う工作をした可能性が浮上、リチャード2等巡査は殺人容疑で逮捕される事態となった。