陰謀論は世界中に存在する。コロナ関連でも「コロナワクチンは人口減少を目論んだものだ」などの陰謀論を信じる人が少なからずいる。人が陰謀論を信じる背景にあるのは「人の欲求」だった。ネットメディア論、情報経済論を研究する山口真一氏(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授)による連載「フェイクニュースの研究」の第5回。
フェイクニュースの中には「陰謀論」といわれるものがある。定義は難しいが、概ね「何らかの出来事について、背後に強力な集団・組織による力が働いているという考え」といえる。例えば、「1969年に人類が月面に着陸したというのはでっち上げだった」「2001年の米国同時多発テロの首謀者は米国政府(ブッシュ元大統領)であった」といったものだ。
荒唐無稽で誰がそんなものを信じるのか?というように思うかもしれない。しかし『American Conspiracy Theories(アメリカの陰謀論)』などの著作がある米マイアミ大学教授のジョー・ウシンスキー氏は、「誰でも少なくともひとつは、陰謀論を信じている。もしかするといくつかは信じているかもしれない」と述べている。
実際、英ケンブリッジ大学が「世界を支配する秘密結社が実は存在している」などの陰謀論5つを使って調査したところ、ほとんどの英国人がどれかについて「信じている」と答えた。しかも陰謀論を信じている人というのは、引きこもりでネットのヘビーユーザで……というステレオタイプのイメージとは異なり、「社会的な階級や性別や年齢を問わず存在する」ようだ。