フェイクニュースは事実に比べ6倍のスピードで拡散していく。なぜ、これほど社会に広まってしまうのか。その背景には、「フェイクニュースを信じている人は、そうでない人に比べてはるかにその情報を拡散する」「フェイクニュースは目新しい」「怒りはSNS上で最も拡散される」という3つの要因がある。連載「フェイクニュースの研究」の第2回。
この社会には、実に大量のフェイクニュースが広まっている。新型コロナウイルスに関連しても、「2020年4月1日に東京がロックダウンされる」「新型コロナウイルスは26~27度のお湯を飲むと予防できる」などのフェイクニュースを見た人は多いのではないだろうか。今年の2月に開始したロシアのウクライナ侵攻に関連しても、多くの根拠不明情報を目にする。
それもそのはずだ。実は、――フェイクニュースの方が事実のニュースよりも拡散スピードが速く、また、拡散範囲が広い――という衝撃的な研究結果が、2018年に科学誌Scienceに掲載されている。研究では、300万人のTwitterユーザの間で流布した12万6000件のニュース項目を分析した。その結果、なんと事実がTwitter上で1500人以上にリーチするには、フェイクニュースより約6倍の時間がかかっていたのである。
なぜこれほどまでにフェイクニュースは広まりやすいのか。そこには主に次の3つの要因がある。
(1)フェイクニュースを信じている人は、そうでない人に比べてはるかにその情報を拡散する
(2)フェイクニュースは目新しい
(3)怒りはSNS上で最も拡散される
フェイクニュース、信じている人ほど拡散
最も大きな理由は、フェイクニュースが作成・発信されたとき、それを拡散したがるのは「信じている人」であるという点だ。私の研究チームは、2022年1月に5074名を対象として、ファクトチェック済み(FIJやその関連団体によって誤り・根拠不明であることが確認されている)の実際のフェイクニュースを使って調査を行った。調査では、政治関連のフェイクニュース6つ(注)を使用した。
(注)保守派にポジティブと考えられるニュース3件、リベラル派にポジティブと考えられるニュースを3件とした。さらに、その条件に合うもので拡散量の多いものを選択した。
図1は、政治関連のフェイクニュースを知った人がどのように判断したか、それぞれ「正しいと思う」「わからない・どちらともいえない」「誤った情報・根拠不明情報だと思う」の3つで回答してもらった結果だ。
これを見ると、ファクトチェック済みの情報にもかかわらず、どのフェイクニュースでも「誤った情報・根拠不明情報だと思う」人は20%前後しかいないことが分かる。その一方で、「正しい情報だと思う」人は40%前後いる。
さて、続けてその情報をSNS、メッセージアプリ、直接の会話などなどで拡散した人における、真偽判断結果が図2である。ただし図2では、「誤った情報・根拠不明だと思う」について、誤情報と判断したことを付記したかどうか別で示している。
図2から特徴的なことが分かる。それは、「正しい情報だと思う」人が図1に比べて圧倒的に多いことだ。どのフェイクニュースでも60%前後の人がそれを信じていることが分かる。つまり、フェイクニュースを信じている人ほどその情報を圧倒的に拡散しやすいといえる。