コロナの感染拡大の裏で、食料不足も深刻化している北朝鮮（写真：AP/アフロ）

（金 興光：NK知識人連帯代表、脱北者）

　最近、海外メディアが報道している北朝鮮における新型コロナの感染状況は断片的で曖昧だ。その報道はどれも酷似しており、主に以下のような内容である。

　去る5月14日、金正恩（キム・ジョンウン）総書記の主宰で北朝鮮党中央会議政治局会議が開かれた。そこでは、北朝鮮における新型コロナの感染拡大に対応するため、初めて国家特別非常防疫体制が敷かれることが決まった。コロナが発生した地域に対する徹底した封鎖と住民の移動制限、国境と税関の遮断強化など厳格な封鎖措置を北朝鮮全土で実施する──という内容だ。

　北朝鮮は中央テレビを通じてコロナ感染者と死亡者に関する詳しいデータを開示するなど、コロナ統制状況を連日のように報道している。以前とは打って変わった対応だ。

　もっとも、ここで報じられている内容は、北朝鮮の情報を収集している脱北者団体や個々の脱北者が北朝鮮の内部協力者などに対する電話を通じて確認した現状とはかけ離れている。

　その理由は、韓国の情報当局やメディアが北朝鮮の内部事情を知らず、北朝鮮の対外的なプロパガンダをそのまま伝えていることによる。

　北朝鮮の情報収集を進めている脱北者の団体には、少数だが北朝鮮における内部協力者や友人知人らがいる。そのため、断続的ではあっても、北朝鮮で起きている事実を基に分析している。ゆえに、北朝鮮の公的な情報をそのまま報道する海外メディアとは、内容が違う。

　韓国の情報機関の場合も同じである。

　文在寅（ムン・ジェイン）政権の5年間に、北朝鮮に対する諜報活動が弱体化したため、北朝鮮で何が起きているのか、十分なリサーチができなくなっている。

　脱北者団体が把握している北朝鮮の新型コロナパンデミックは海外メディアが伝える内容より、はるかに深刻で被害規模も莫大だ。