ニトリホールディングスがIT部門の人材に高額報酬を支払い、人員数を現状の3倍に増やす方針を明らかにするなど、日本のIT投資に変化が見られるようになってきた。IT化と生産性には密接な関係があり、ニトリのような事例が増えてくれば、経済全体への波及効果は確実に大きくなるだろう。(加谷 珪一:経済評論家)
日本のIT投資は異常事態が続いている
多くの人は明確に認識していないかもしれないが、日本におけるIT投資は悲惨な状況である。日本全体のIT投資額は過去30年間ほぼ横ばいを続ける一方、同じ期間で諸外国は投資額を3~4倍程度に増やしている。
1990年代以降の世界経済において、ITが成長の牽引役であることは誰もが知る現実であり、ITへの積極投資なくして経済成長を実現できないのはほぼ自明の理と言って良い。そうした状況であるにもかかわらず、日本だけがIT投資を増やしていないというのは、かなりの異常事態と捉えるべきだ。
今さら説明するまでもないが、ITの導入と企業の労働生産性、そして賃金には密接な関係があり、単純にシステム化を進めるだけでも、生産性は向上し、賃金の上昇につながる。ところが日本は、賃金上昇の最短距離であるIT投資に異様なまでに消極的であり、当然の結果として業績が拡大せず(日本企業全体の売上高は、ほぼ横ばいの状況が続いている)、賃金も上がっていない。